よーすけカサブランカス

アフター・ヤンのよーすけカサブランカスのレビュー・感想・評価

アフター・ヤン(2021年製作の映画)
3.9
一応は家庭用アンドロイドの故障を通して、死生観と家族のあり方を問う、みたいなテーマだと総括することができそうなんだが、感触としては様々な要因が絡まって、それが綺麗に答えが出されることはなく、ふわっとした感じで終わる。ただ印象は強い作品。
まず、アンドロイドは実は家族の些細な日常を隠し撮りしていた、とベタな感動があるのだが、それは取っ掛りにすぎず、そこから彼の恋愛へと話は進む。
彼が恋したアンドロイドは過去に恋した人物のクローンであり、彼が話していた死の後は無という死生観に反するところから生まれた存在。だが同様に愛おしい、というところから自分は何なのかという彼の煩悶が、直接そうは言わないが仄めかされる、想像出来る感じがとてもよかった。
ただ面白いのがそれを受けて家族の心が変わったかというとそうでもなく、あれだけ感動したのに家には戻さず博物館へ。すごいのはすごいけど結局見世物に。
娘も、あの歳で死について理解させるのは酷なんだが、前に進んでないようにみえるので、うーんとなる。ただこれが人の、死を受け入れられない性というものなんだろう。