Inagaquilala

今宵、212号室でのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

今宵、212号室で(2019年製作の映画)
3.3
まさかとは思っていたが、自分の苦手なファンタジー作品だった。マリアとリシャールは結婚して20年。2人の間に子供はなく、大学で法律を教えている妻のマリアは、若い学生との情事に日々の生活の「艶」を見出している。あるとき、そのマリアの浮気がリシャールの知るところになる。マリアは、夫と距離を置くため、自分たちの住むマンションの道を挟んで正面に立つホテルの212号室(これがフランスでは意味を持ってくる数字なのだ)に緊急避難する。

ところが、その部屋に20年前の姿をした若きリシャールが現れる。ここからがファンタジーなのだが、そういう心構えがなかった自分としては、やや途惑う展開となった。若きリシャールとの際どいやりとりがあったり、リシャールがかつて結婚を意識していた元の恋人まで現れたり、極め付けはマリアの昔の彼氏が次々と登場したり、頭のなかで整理しながら観ていかないと、次から次へと移り変わる展開に収拾がつかなくなる。所詮はファンタジーと思いながらも、リアルとの接点を探すうちにエンドマークとなる。

まあ、設定ありきの作品なのだろうが、ファンタジーとリアルの境目があまりにはっきりし過ぎているために、この結婚20年目の夫婦の醒めた関係など、どうでもよくなってくる。まあ、ファンタジーと断じて、スルーしてしまってもいいのだろうが、この手の作品が性には合わない自分には、ただただ徒労感が残るのみだ。名前と容貌から、そうではないかと思っていたが、主演のマリア役を演じたのが、マルチェロ・マストロヤンニとカトリーヌ・ドヌーブの実の娘であるキアラ・マストロヤンニ。2人の特徴をよく受け継いだ、なかなかの演技派の女優さんだった。この作品での数少ない収穫かもしれない。彼女は、この作品で第72回カンヌ国際映画祭ある視点部門最優秀演技賞を受賞した。
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