塔の上のカバンツェル

MONOS 猿と呼ばれし者たちの塔の上のカバンツェルのレビュー・感想・評価

MONOS 猿と呼ばれし者たち(2019年製作の映画)
4.3
現時点で今年最高傑作。

シネマトグラフィが隅々まで素晴らしい高質な映画だった。
高山地帯の廃墟のロケーションは、天上の如くの異世界感は素晴らしいの一言だし、コロンビアの鬱蒼としたジャングルの人智が呑み込まれるような感覚…。

印象的なサウンドエフェクトの使い方も圧巻。毒キノコを食べたシーンの幻覚に彷徨う感覚を表現したピーンと爆ぜるようなSEなど、現代アートにも近い。

また、武装ゲリラ(FARC)と政府軍の夜間戦闘シーンでは、「siacario (邦題:ボーダーライン)」のような暗示ゴーグル越しの戦場と曳光弾に切り裂かれる夜戦描写は、コンバットセンスの賜物でしょう。


青春と暴力が同居した少年兵たちの、最低限に規律が保たれた彼等がジャングルの鬱蒼とした緑の海に沈み込み、徐々に言語を失い野生化していく中で、
果たしてブラックホークヘリとucp迷彩に身を包んだ最先端の武装に身を包んだ軍人が象徴するのは文明社会そのもの。

"指示をこう"の無線と、「炎628」や「殺人の追憶」がフラッシュバックする、少年が投げかけてくるカメラの向こう側の我々への目線。

社会性とフィルムワークの先鋭性が完全に融合した傑作。
褒めて褒めて褒めちぎって、監督アレハンドロ・ランデスには次回作を作らせなければならない。