2010年から2020年を感じさせる映画であったと個人的に思う。映画を彩る音楽のリンクや、映像の美しさも見事。まさに反転する前半と後半の展開も感動的であるし、人と人とが関わる事の正も負もフェアに描いている映画だと思う。そういう意味でもとても現代的である。
それぞれの登場人物たちの心情を饒舌に表現するのは音楽だ。Animal collective、tame impala、Frank Ocean、Kendrick Lamar…。どれもがとても見事に映画を彩る。そして映像の美しさ。前半の刺激的な展開も、後半の幻想的ですらある美しい映像もすべてが印象的だった。
物語は兄妹の視点として前半と後半で分かれる。兄はレスリング部のスター選手であるが、ケガをきっかけに歯車が狂っていく。彼の苛立ち、そしてある最悪な展開に至るまでの苦悩。彼は人との関係性の中で苦しみ、怒り、そして行動が変わっていく。後半の妹ははじめは兄のある事件から居場所がないが、ある男の子との出会いにより変わっていく。彼女もまた、人との関係性の中で救われていくのだ。
当たり前のことであるが、他者との関りの中で苦しみ、そして喜びを見出す。それは時に恐ろしいまでに人を狂わせるが、それを救うのもまた他者との関りなのである。後半、RadioheadのTrue Love Waitsとともに、とても感動的な展開があるが、その切なくそれでいて美しさに涙が止まらなかった。素晴らしい一作だった。