ちろる

コリーニ事件のちろるのレビュー・感想・評価

コリーニ事件(2019年製作の映画)
3.9
ドイツの小説家フェルディナント・フォン・シーラッハのベストセラーを映画化した本作。
ある殺人事件の担当になった新米の弁護士が、経済界の大物実業家を殺害したコリーニを国選弁護人を受けることになる。
黙秘を続けた被告だが、ある証拠品をきっかけにして事件の背景と、自身の過去やドイツ司法にまつわるスキャンダルと向き合うことになる。

法は法であるから隠されているわけではない。故に知っている人は知っている。
しかし、どこの世界でももちろん日本でも法律家でもなければ知られていない法がひっそりと息づいているのが現状だ。
そんな多くの国民が知らないような法律や条文をみんなに知らしめたいとき、小説やドラマ、映画の力はとても大きい。
この原作が大きな問題提起となり調査委員会が設置され”国を動かした”という事実は感動的だ。

このコリー二事件という物語の特筆すべき点は、ペンは剣よりも強し、の如く、社会を動かし政治を動かしそして司法を動かしたという点だ。

気さくで、誰からも尊敬される大企業のオーナーがなぜ殺されなければならなかったのか?
主人公は恩人を殺めた男の弁護をする矛盾に悩みながらも、調査を進めるうちにある悲劇とそれを糊塗してしまった法律の陥穽に行き当たる。

裁判シーンが多く出てくるわけではないので、法廷映画として期待した人には肩透かしをくらうかもだが、それでも数少ない法廷シーンのやり取りはやはりスリリング。
謎解きの部分でのサスペンスの盛り上げ方も上手く、裁判の行く末と動機の解明を終盤まで固唾を飲んで見守ることができる。

戦争犯罪が事実上時効という状態になり罪を問えなくなっていた、ここがこの映画の新しい視点で、大きなポイントとなっているが、コリーニの人生には復讐しかなかったのでしょうか、自分の人生を生きる、そういう選択は出来なかったのかと思うと悲しい。
被害者が犯行に及んだ本当の理由がジワジワと突き刺さってくる上質な映画作品であった。
序盤の伏線貼りを過ぎれば中盤からは、ジェット・コースターなかなり引き込まれる作品。
日本公開が少なかったみたいだが、こういう骨太な作品がもっと全国で公開されるべきだと思いました。
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