JunichiOoya

発酵する民のJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

発酵する民(2020年製作の映画)
1.0
大阪十三での公開時に見逃していて。

何回も見た予告編に一抹の不安はあったのだけれど、「発酵」と「民」のワーズに心惹かれて「いや、これは絶対見なあかんやつや」と心に決めていた映画の一つ。
結果… ひたすら我が身の不明を恥じるのみ。

登場する鎌倉の人たちは口々に「いろんな人がいて良いはず」と生き方の多様性を訴えるのだが、その彼ら自身一様に「同じ身振り手振り」「同じ語り口」そして極め付けの「同じ表情」。
その強い既視感は、「三宅洋平テイスト」にあるように感じる。スクリーンにいつ安倍昭恵さんが満面の笑みを湛えて映り込んできても不思議じゃないという。

実は予告編で酒造りが出てきた折には少し期待したのだけれど。でもその酒が「五人娘」だったとは! 
実は私は映画より日本酒の方が好きなクチだし、発酵について日本酒作りの立場から発言があるのなら、と期待していたけど、寺田本家の酒はキッパリ否定したい。
何より美味しくないもの。

そして当然の流れとして、盆踊り部の連中(まあ、寺田本家の若き蔵主も太鼓担当でその一味ではあるけど)のいう「No Nuks」は映画の過程(宣伝文句に謳われるところでは撮り手は彼らを七年間追い続けたとのこと)で、ものの見事に「亡き者」にされていく。

一切の思考、思想の深化をすることなく、ひたすら気分だけで「楽しくやってまっせ」感を出すことだけが彼らの日常なのね。

映画を見ながら(流石二十数席の小屋から途中退場することだけは我慢したけど)何度となく怒りの拳を握りしめたことでした。言うまでもなく彼らへの同意表明としての拳ではなく、彼らへの全否定としてね。
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