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アトランティスのギルドのレビュー・感想・評価

アトランティス(2019年製作の映画)
3.0
【映像で見せる兵士のワンス・アゲイン】【東京国際映画祭】
ロシアとの戦争で仕事も生きがいも失ったウクライナ元兵士が身元不明の死体を発掘する女性との出会いで変わろうとするヒューマンドラマ映画。

 ドキュメンタリー映画が創作の源だけあって実体験に基づいた画面設計とキューブリック / タルコフスキー的映像手法をまぶした映像美がポイントだと思います。
戦争の爪痕を残した退廃的な世界観はタルコフスキーのノスタルジアを彷彿させて、そこが戦争の精神的負傷を投影したような感じが説得力があると感じました。少なくとも太陽の光、アーク光、炎、水、岩などの元素が兵士たちの感情を投影している辺りが「ノスタルジア」的なことをしようとしてるんだなと感じました。
他にも主人公が仲間思いであるんだというのを小道具の置き方、痛みの共有で伝える…だけではなく元素的象徴を交えた生命・希望の表れを映像で見せるところが凄く良かったです。
映画の着地自体は形式化されたものではあるものの、そこをリアルに映してくれたサーモグラフィが他の映画にはないオリジナリティを担っていて映像面で十分に楽しめたかな。

 ただ映像面で楽しめたけど映像密度のボリュームが物足りないのが落ち目に感じました。それだけならまだしもストーリーラインも着地に対して決定打が少なくて冗長でカタルシスも希薄なので、そこが退屈に感じました。
廃れた映像をただ流すだけなシークエンスも随所にあって、1回ならまだしも何回もやられると引き延ばされた感じがノイズかな。

 アメリカン・スナイパーやプライベート・ウォーなど戦争が齎す影響を映した映画が数多く存在する中で、映像の画角・画面構成などの工夫が良いだけに肝心のストーリーが微妙なのが勿体無かったです。そこもドキュメンタリーを基調としたところが一種の強みと弱みを同時に出してしまったと思います。

ただ映像面ではかなり工夫が凝らされているので、そこを目的に鑑賞するのもアリかなと思います。
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