※ネタバレ注意
グリーンゴブリンを主役にしていたら満点だったかもしれない。
悪い作品じゃないんだけれど、でも、これは僕には合わなかった。
僕がライミ版『スパイダーマン』に心を躍らせた要因はなんだろう。
クラシカルでちょっとスプラッター気味な世界観。
遊園地のようにギミックが発動し、右肩上がりに盛り上がってく戦闘シーン。
そしてこの上ないほどベタすぎる演出!
チェーンソーとショットガン!
ブルースキャンベル!!
トムホとメイおばさんがグリーンゴブリンの爆弾の爆発に巻き込まれるシーンあったじゃないですか。
あれライミが撮っていたら爆発する瞬間に目を映したと思うんすよね。
https://youtu.be/hHKUBg_c9no
インパクトが全然違う。
ライミが手がけた作品には遊び心があった!
人を引き寄せる魔力みたいなものが宿っていた!
しかし、これにはそれが足りていない。
まるで他のマルチバースに転送された気分だ。
かゆい所に手が届かない。
特にモヤモヤしたのが物語のラスト。
引き伸ばししすぎてくどく感じる。
もう少しサラッとシャキッと別れることはできなかったのだろうか。
(僕がああいうので一番好きなのは大林宣彦監督の『時をかける少女』)
そしてヴェノム。
お前は関係ないよと言わんばかりにオマケキャラ扱いしやがって!
『ヴェノム2』の感動を返せ!と言いたくなる。
僕はヴェノムとエディがみんなと仲良くしてるところが観たかったの!
あの二人だけ仲間外れでそこが凄く悔しい。
嬉しいところももちろんあった。
それがグリーンゴブリン!
今作で一番キャラが立っていたのは間違いなくグリーンゴブリンだ。
MCUを盛り上げるためだけに連れてこられたような他の奴らと違って、全く別の世界に来たとしても自分が何をすべきなのかを良く理解している。
素晴らしかったのが、ウィレムデフォーがグリーンゴブリンの仮面を割ったあの場面。
あの路地裏は『スパイダーマン2』でトビーマグワイアがスパイダーマンのコスチュームを捨てた場所で、更にライミが監督したダークヒーロー映画『ダークマン』にも登場していて、リーアムニーソンが演じる主人公ペイトンがダークマンのトレードマークとなるボロいコートを拾った場所でもある。
あの瞬間だけ(うおおっ)ってなった。
『スパイダーマン』や『ダークマン』で描かれていた"数奇な運命に巻き込まれて異質な存在と化した者の怒りと悲哀"があの中で一番表れていたのは実はグリーンゴブリンだったのではないかと思う。
スパイダーマンがヴィランをただ単に治療するという展開は、あまりにも軽率で間違っていると僕は言いたい。
しかも治療していく行為そのものが一方的すぎて、選択と決断がトムホ以外十分に用意されていなかった。
あれで彼らが幸せになったとは到底思えない。
彼らに必要なものは排除ではなく共生だったのでは?
エディやペイトン、そしてピーターパーカー達が己の中に宿る化物を受け入れて孤高に去っていったように、彼らもまた同じ運命を突き進んで元の世界にへと帰っていく、そんなクライマックスにしてほしかったなあ。
このままだと心にしこりが残るので最後に一言。
『ダークマン』は最高だ!!
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「大丈夫よ、人工皮膚さえ完成すれば」
「僕もそう思った、眠れない夜に」
「ただの火傷だ、皮膚一枚だ、
何でもない、覆えばいい」
「皮膚が完成し、マスクを被ってしまえば君は愛してくれる」
「哀れまれずに」
「でも妙だ」
「マスクを被っていく内に自分が化物に変わっていくのが分かった」
「恐ろしい化物の姿に」
「僕は一人で行ける、一人で生きるしかないんだ」
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【僕に与えれた力は僕を一生呪い続ける】
【僕はスパイダーマン】