みんと

罪と罰のみんとのレビュー・感想・評価

罪と罰(1983年製作の映画)
4.1
アキ・カウリスマキ監督長編デビュー作。

弱冠26歳にして初監督の彼が挑んだのは難解で知られる文豪ドストエフスキーの名作『罪と罰』。
舞台を現代のヘルシンキに移し、食肉解体工場で働く青年ラヒカイネンの罪と罰を描く。

工場での仕事を終えたラヒカネンは通りすがりの中年男の後をつけ、電報と偽りドアを開かせピストルをつきつけ殺してしまう。そこへケイタリング店の女エーヴァが買い物袋をさげて入ってきたが、彼女は悲鳴もあげず、彼を逃がすのだった……。

いや~とてもデビュー作とは思えない完成度だった。青臭さとか、荒削りな印象は全く感じられない。ただ、題材が題材なだけに、後の作品群に見るオフビート感が抑えられ、真面目で深刻、そして文学的な匂いが全体に漂っていた。


冒頭、一匹の虫がこともなげに潰される。
そして、延々と撮り続ける食肉の解体作業シーン。
…のっけからカウリスマキしてる。
そしてファスビンダー監督『13回の新月~』のデジャヴ感も。笑
更には、観終えて唸る導入部分でもあった。

自らの意思で殺人者となった青年の虚無感を浮き彫りにするカットやシリアスな映像はやはりセンスを感じる。原作にかなりアレンジはは加えられていたものの、既に確立されたカウリスマキ・スタイルの中で、しっかり罪と罰を考えさせられた。
まさに監督流『罪と罰』。好みだった。


マッティ・ペロンパーは出番少なめながら初期作から独特。前髪も鬱陶しそう。笑
そしてしっかり爪痕を残してた。


“虫けらを殺したために、俺まで虫けらになってしまった“
みんと

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