食肉工場で働くラヒカイネンは、ある日資産家のホンカネンの家に押入り、彼を射殺する。
しかし殺害後、部屋に届けに来た出前の姉ちゃんエヴァと鉢合わせてしまう。
彼は俺が殺した、警察に電話しろ、と言って出ていってしまうが、後日エヴァの勤務先に現れる。
彼女を脅すわけでもなく、自分の住所まで教えるラヒカイネン。
不審に思ったエヴァの上司が、彼女に彼は何者か説明を求めるが、エヴァはただの客だ、と嘘を吐いてしまう……
文豪ドストエフスキーの同名の小説を、現代フィンランドに翻案した、アキ・カウリスマキ監督の長編デビュー作。
原作は未読で、主人公が老婆を殺すぐらいしか知らないけど、ストーリーはかなり異なるのかな?
正しい事だと思って殺人を犯し、やがて罪の意識に苛まれる所は原作のテーマと同じ。
作風はカウリスマキだけど、今作はユーモア少なめ、マジメに犯罪映画寄り。
主人公とエヴァの関係の変化に惹きつけられる。
「愛してる」とも「好き」とも言わず、キスしたり抱きしめたりもないけれど、ラストの2人の交わす言葉は愛から来るものだったのだろうか?
悪に傾きまくった人間が、最終的には性善説へと行き着く、小説「羅生門」の逆パターンのような作品でした。
監督作品の常連、マッティ・ペロンパーはこの作品から既にいるのね。
彼が登場すると、またお前か!と笑ってしまう。