アキ・カウリスマキの初監督作品。
ロシアの文豪、ドストエフスキーの罪と罰をアキ・カウリスマキが現代のフィンランドを舞台に置き換えて描いた。ロシアの寒々しさとフィンランドも、おそらく寒いんだろうが、雰囲気が似ていていいんではないだろうか。ロシア語かと思ったがフィンランド語だろうな、話しているのは。
原作を読んだのは20代でもうだいぶ忘れていたが、金持ちを殺すところなどは原作に忠実になっていたかと思う。原作は高利貸しのばあさんだが、こちらは実業家。
ドストエフスキーの代表作であり、世界的な名作の一つしても挙げられる原作は、ほとんど忘れたがカウリスマキ監督のこの作品を見るに、こんなことは今でもあるように思えたし、令和に生きる自分たちも既視感を覚えることだろう。
初監督作品からして、音楽、酒、煙草、と後のカウリスマキ監督作品の中で必ずみられるこれらの要素が初めから終わりまであって、特に音楽などの使い方がアキカウリスマキ監督は非常に巧みだなと思う。ロックジャズ、オペラ、シャンソン、これらの音楽がいいタイミングで使われて、カウリスマキ監督が言うようにセリフよりも音楽と映像などで魅せることを重要と考えているのがうかがえる。サイレント映画からの影響がこういう形になって表れるんだなあ、と感心する。
主人公の男はロン毛だが剥げてていわゆる落ち武者のような髪型であるが、原作のラスコリーニコフを実写化したらこんなではないだろうかと思わせてくれるのは監督の手腕ではないだろうか。カウリスマキ監督作品の主人公はみんな全然かっこよくないのでそれがいい。