Ken

オフィシャル・シークレットのKenのネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

これは本当に良い映画。めっちゃ堪能できた。
ここまでの没入感は久しぶり。冒頭からの不穏な雰囲気、映画全体を通して漂う緊張感と高揚感、どんどん話に引き込んでいくストーリー展開、役者陣の繊細な演技、どれもが素晴らしく、もう夢中になって観てた。良心と倫理観が描かれた素晴らしい作品。

マット•スミス、レイフ•ファインズを始め役者陣が素晴らしかった。中でもキーラ•ナイトレイの演技がもう最高だった。今まで見てきた中で1,2を争う怪演だったと思う。もうキャサリン本人だった。キャサリンが当時抱えていた苦しみや苦悩、緊張感がひしひしと伝わってきたし、彼女の誠実さと勇気を見事に演じ切ったと思う。綺麗で演技力があって大好きな女優。

恥ずかしながら、当時小学生だった自分はこの騒動のことは全く知らなかった。彼女の行動に対してはいろんな意見があると思うし、一概に全肯定するのは難しいかもしれない。でも、アメリカが凄く不確かな情報を元にイラクに戦争を仕掛けようとしてて、且つ、イギリスと組んでUNを脅して無理やり戦争を不正に可決させようと企んでいた事を考えると、彼女の行動は正しかったと思うし、多くの命を救う為の勇気ある立派な行動だと俺は思う。いつだって世界を大きく変えれるのは、こういう勇気を持って立ち上がれるほんの一握りの人。事実、戦争は半ば強引に決行されたけど、彼女の行動は間違いなく多くの人に勇気と希望を与えたし、今の世界情勢にも影響を与えたはず。「私が仕えてるのは政府でなく、国民」って言う台詞が刺さった。

この映画の面白いところは、キャサリンの行動をヒロイックに表現するのではなく、巨大権力を敵に回す内部告発の恐ろしさ、告発者が日々どれほどのプレッシャーに苦しめられるかを描いてるところ。ヒロイックに真実を暴いて不正を正す映画は多くあっても、この映画のように、個人の悪夢のような実話を描いた映画はあまりないと思う。

ラストの裁判の展開はまさかだった。あれなら最初から告訴なんてすんなよって感じだし、自分達が不正をしてるってもうバレバレ。正しい事をした彼女があそこまで苦しめられ、不正を犯した国が罪から免れるのはおかしい。ラストの海辺での検察の奴の台詞が脚色されてるかどうかは分からないけど、本当に彼女をただの見せしめにする為だけにあこそまで引き伸ばしてから告訴したのであれば、最低。公に出来ない不正をやってるのは自分達なのに。

この映画だけで判断するのもあれだし、あんまり適当な事言えないけど、政府ってどこの国も終わってんな。国民は知らないだけで、汚い事がたくさん横行してるんだろうな。「24」の世界もあながち間違ってないかも。国を動かす為には、必要悪もあるって言ってしまえばそこまでだけど、今一度、本当にそれで良いのか?国が罪を犯しても、何も無かったかのように許されて良いのか?倫理観は必要ないのか?を問いたい。

カフェでの、キャサリンとキャサリンのアジア系の同僚のシーンは号泣した。同僚が言った「あなたは私達の誇り」は、当時の彼女にとって凄い救いだったと思うし、観てるこっちも何か救われた。良いシーン。

旦那さんの強制送還も本当に酷くて最低だった。State Bullyingなんて単語あるんだ笑 ほんとただの嫌がらせだよね。よくもまぁあそこまであからさまな事が出来るよね。結果的に何とか送還されずに良かったけど。たった数人の登場人物だけで言うのも可哀想だし、他の国でもきっと起こるだろうけど、イギリスにはガッカリした。

スペルチェックのミスは笑った笑笑。思わぬ落とし穴笑。あまり笑うシーンじゃないのかもだけど笑。アメリカ英語とイギリス英語、綴り違うもんね笑。そして、もっと笑ったのが、その後女性を励ます時に男性が言った”You wan’t a cup of tea?”。いや、この台詞自体は普通なんだけど、この場面でもそれ言う?ってのと、イギリス人マジで紅茶好きだよなって爆笑してしまった笑

イギリスの裁判って、今の時代もあのカツラ被るんだね!びっくりだよ笑。やっぱりイギリスは、伝統と格式を大切にするイメージが強い。

ギャヴィン•フッド監督、こんなに良い映画撮るんだ。X-MEN ZEROも好きだったけど、他の作品も見てみたくなった。

上映館少ないし、フィルマでの点も思ってたより低いけど、これはたくさんの人に観て欲しい一本。
Ken

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