最高クラスの実話映画。
スニッカーズやゲームセンターといったリチャード側の小市民的な描写を冒頭に丁寧に行った結果、事件から雪だるま式に事態が悪い方向に転落していくのを嫌という程に実感させられる。
権力の具現であるマスメディアと官憲が"暴走した正義"として描かれるのはよく見られるが、明確な"悪"として描かれるのは出来そうで出来そうにない。しかし今作ではワトソンの口から冒頭で"増長した権力=悪"というスタンスが明確に張られているので、社会的なテーマと今作の悪役をわかりやすくしている。
また今作ではマスメディア側は徹底した悪としては書かれていないのが特徴的。というのも新聞の見出しはセンセーショナルではあるが、実は扇動的とまでは言えないものをチョイスされているのだ。とはいえ、プライバシーを侵害する自称"第三の権力"としてのマスメディアの取材には辟易するしかないが。
しかしながらここで問題となるのは徹底した悪でないが故に、自身のもたらしか災禍を贖うところまでいかない点。これは今回の題材としてもかなり留意する点ではあると思われる。
今作の最も注目すべき点は主人公リチャードの腹立たしいまでの正しさを、中盤に視聴者に納得させた点。聖人君子ではないが、常に正しくあろうとするリチャードの姿に胸を打たれる。まさに今作の官憲の在り方に対するアンチテーゼだ。
個人的に最も評価したのは手榴弾の描写なんですけどね!手榴弾に鉄片を混ぜて殺傷力高める描写まで丁寧にやれとか誰が指示したのか!(拍手)