土平木艮

夏時間の土平木艮のネタバレレビュー・内容・結末

夏時間(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

あらすじ…主人公オクジュが集合住宅を去る場面からスタート。父、弟と3人で祖父の家に向かう模様。母の姿はない(父に愛想をつかして出て行ったと思われる)→到着。弟と2人で家の中へ。祖父は体調不良で病院にいるらしく、父が迎えに行く→祖父と父、帰宅。4人で夕食→叔母も家にやって来る。離婚寸前な様子→父は車に大量の靴を積んで出かける。『偽物の路上販売』をしてる模様。そんな余裕の無い暮らし振り→→→古いミシンで縫物をしたり、彼氏に『商売モノの靴』を偽物と知らずにプレゼントしたり、二重瞼にするための手術費用を工面するために『商売モノの靴』を売ろうとして警察に突き出されたり、別れた母との面会を巡って弟を泣かせたり……ごくありふれた?『夏休みの出来事』が描かれる→→→祖父、失禁したり、衰えてくる→父と叔母、祖父を老人ホームへ入れようと考える。オクジュと弟にも相談→父と叔母、2人とも生活に苦しんでいるため、『祖父の家を売ろう』と画策→父を咎めるが、逆に『商売モノの靴に手をつけ、売ろうとした』コトを責められる→『おそらくオクジュのコトをそんなに好きではない彼氏』から靴を取り返し、家に帰る→自宅付近で救急車とすれ違う→玄関先で弟から『祖父が倒れて救急車で運ばれた』と知らされる。弟と2人で留守番→翌朝、祖父の死を電話で知らされる。弟と2人で葬儀場へ向かう→母も駆けつける。5人で『おみおくり』→自宅へ戻り、父、叔母、弟と4人での食事。祖父の不在のためか?泣きじゃくるオクジュ。自室に戻り、泣き疲れて眠る。そして、再び朝が来る。




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夏休みの『ありそうな光景』が、ただ映し出されていく。そんな作品。

中盤あたりで、やや眠気を覚えてしまった。

でも、後半に差し掛かって物語が『ちょっと』動きだすあたりで引き込まれる。

祖父の体調の変化、そして死。
実際に、自分の身の周りで起きたら『大事件』なんだけど…。作中での『出来事』としての描かれ方は淡々としたもの。

その分、周辺で見られる『父と叔母の生臭い考え、行動』の刺激が強く感じられた。勿論、それぞれに事情を抱えてはいるんだけど。

『老いた親を目の前にしても、親のコトを思いやらず、自分の都合だけを考える』……ちょっとだけ『東京物語』に近いモノを感じた(実際、ユン・ダンビ監督は『小津安二郎』作品が好きらしい)。

でも、描こうとしているモノは全く『別』。
『多感な時期の少女の胸の内』を、言葉では語らせず、『絵』だけで描いてみせる。
夏休みの出来事だけに『とても繊細に美しく描かれた絵日記』みたいな感じ。


因みに、お祖父ちゃんのセリフは殆ど無く、心の内も表現されない。『思い出の詰まった家』と一体化した『舞台装置』のようでもある。
父や叔母の『実父の気持ちなど考えもしない』言動があるから、尚更その感が強まる。
でも、多感な時期のオクジュや、幼い弟にとっては、とても貴重で大切な存在。
『何も語らない祖父』に対してどう思い、どう接するか?その部分の『父・叔母との対比』で、オクジュの『水々しい感受性』を表しているように思えた。


『夏休みを過ごす祖父の家』なのに、田舎じゃなくて『郊外の住宅街』なのが斬新だった。

弟役の子役が上手い。
土平木艮

土平木艮