MasaichiYaguchi

ラーヤと龍の王国のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ラーヤと龍の王国(2020年製作の映画)
4.1
ディズニーの長編アニメーションがスクリーンに帰って来た。
勿論、劇場と同時に配信でも公開されているが、やはり大きなスクリーンで包み込むような大音量での鑑賞はひとしおのものがある。
本作は「ベイマックス」のドン・ホールと「ブラインドスポッティング」のカルロス・ロペス・エストラーダのダブル監督により、東南アジアを思わせる龍の王国を舞台に、少女ラーヤの戦いと成長の物語が伝説の龍シスーを交えて描かれていく。
ディズニーのヒロインは美しいだけでなく、勇気や信念、そして行動力があって困難な状況を切り開いていくが、本作のラーヤは歴代のヒロインと比べ、その置かれた状況は一、二を争う程に苦難に満ちている。
人々が平和に暮らしていた王国に突然、邪悪な悪魔が襲い掛かり、世界は荒廃し、悪魔に襲われた人々は石に変えられる。
龍たちは自らを犠牲にして悪魔を払うが、500年後、或ることを切っ掛けに悪魔が復活して、人々を恐怖のどん底に陥れていく。
その切っ掛けを作り、聖なる龍の力が宿る「龍の石」の守護者一族の長にして最愛の父を石化させてしまったラーヤは、父の石化を解く為に姿を消した最後の龍シスーを探す旅に出る。
最後の龍シスーを蘇らせる旅の中で、ラーヤは父を元にするには王国に平和を取り戻さなければならないということ、それには悪魔復活の切っ掛けとなった、砕けた「龍の石」の破片を全て集めなければならないことを知る。
ただラーヤには相棒というかペットのトゥクトゥクしかいない。
つまり一人で強大な敵を相手に世界を救わなければならない。
これにはラーヤが厄災の封印を解いてしまう切っ掛けが“裏切り”によるものであり、劇中で台詞としても出てくるが、ラーヤは他者に不信感を抱いている。
それに対し、ラーヤの父、そして何とか出会えたシスーは「信じ合う」ことが大切だと説く。
ラーヤと楽観的で純真なシスーは、世界を救う為に「龍の石」を集める旅をしていくのだが、この旅はラーヤに「人を信じること」「仲間と共に生きていく」ことを教えるものとなる。
“石集め”の旅の中でラーヤに賛同して加わっていく“助っ人たち”が個性的で楽しいが、ラストの方での“結束”は見ていて胸が熱くなる。
この作品はファンタジー仕立てで描いているが、コロナ禍が席巻して社会を荒廃させ、不安と不信、それによる格差や分断が拡大している今、本作は我々の心に希望の灯火を点けてくれる。