Jun潤

戦争と女の顔のJun潤のレビュー・感想・評価

戦争と女の顔(2019年製作の映画)
3.6
2022.08.01

ポスターを見て気になった作品。
歴史全般ほんとーに疎くて、中学生レベルすらあるか怪しいぐらいだし、世界史はまるっとまとめられて日本史もポピュラーなものしか扱わないところに懐疑的ではあったので、こういう特定のシチュエーションにフィーチャーして歴史を描く作品というのは、個人的にはもちろんのこと、過去の出来事を後世に繋いでいく意味でも本当に有意義だと思うので、後学とほんの少しでも映画の一ジャンルに貢献できればと今回鑑賞です。

原題の『Дылда』は「のっぽ」という意味で、主人公イーヤのあだ名。

第二次世界大戦終戦後、退役軍人のイーヤは傷病軍人が入院する病院で働いていたが、戦時中の脳震盪の後遺症から度々起こる発作に悩まされていた。
イーヤが戦線から撤退する際、戦友のマーシャの子どもであるパーシュカを伴い、面倒を見ていたが、イーヤの発作が原因でパーシュカは亡くなってしまう。
帰還したマーシャはイーヤに詰め寄り、イーヤと一緒の病院で働き出し、一緒に暮らし始める。
戦争の傷によって子どもを産めない体になったマーシャはイーヤに、自分の子どもを代わりに産むよう要求する。

むむ、なるほどなぁといった感じ。
長回しのカットが多く、逆にセリフ量やキャラクターの動きは少ないため、ゆったりとした流れの中でキャラの心情や人物相関を深めていく構成。
ここに冗長さを感じるかどうかが今作の評価の分かれ目かと思いますし、僕も終盤眠気に襲われたものの、濃ゆい人間ドラマとしてはあり寄りではないかと。

戦争によって多くを失った女性たちにフィーチャーしており、作品のストーリーとして個人的には、メインのイーヤとマーシャよりも、全身不随になってしまったステパンの妻が、苦悩の末に夫の安楽死を選び自分の手で決行するというのが、なかなか心にキましたね。

キャラクター的には子どもを戦友に殺され(?)、子どもが欲しいのにもう産むことはできないと悩みながらも、イーヤに産ませようと強かに生きているマーシャが特に仕上がっていましたね。
幸運なことに戦争を経験していないので、戦争によるPTSDの苦しさは計り知れませんが、そういう心の苦痛みたいなのは、現代にも共通するものではあると思うので、鑑賞する人に一番近いキャラはイーヤだったのかなと思います。

罪と罰の意識、戦争によって失ったもの、それでも残ってるもの、未来への希望。
平穏な日常は戻ってくるのかもしれないけれど、戦争と平和の間は本当に大変だったんだろうなと思います。
そんな時代を生きた女性たちの儚げな姿が、今作では如実に描写されていました。
Jun潤

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