火箱

ドロステのはてで僕らの火箱のレビュー・感想・評価

ドロステのはてで僕ら(2019年製作の映画)
2.0
とにかく情報処理が下手で、まさにライブ感が重視される舞台的映画。

気になったことは3つ。
①2分後の未来と過去で同じことを出題編・回答編のようなノリで何度も繰り返すわけだが、面白くない掛け合いを毎度2回も見せられることに対する配慮がされていない。特に序盤。
「2分後なんて実際大して変わってない→タイムトラベルならではの落差がない」わけで、この状態をWで垂れ流したらクソつまらないに決まってる。いかにこのつまらない状況を駆け抜けて、ギミックを現実に反映させるパートまで視聴者を導くかが監督の腕だったと思う。

②ドロステ効果の説明がド下手。作ってる側もキャラのしている説明で視聴者が構造を理解できるとは思っていないのか、とにかく2分以上の未来も見えちゃうんだよというシンプルな結論に落ち着くわけだが、それなら別のアプローチもあったのでは。
これが漫画なら読まれないことを前提とした超長台詞とかで一応説明はして、最後にギミックとしてこうなってるよと答えだけを読者に提示する……みたいなパートだから、ここって。
伝わらない説明をつまらない説明で延々とやってしまっているこのパートは物語を通してかなり最悪だ。

③都合の良いときだけパラドクスを起こす登場人物。この作品、かなりSF的な物分かりがよく、それも舞台的・コント的だとは思うものの、タイムテレビを信じる信じないでグダグダやるのはそれはそれで最悪なので、導入部分などは上手く処理していると思う。
 ただ物語が始まってからアホキャラの女店員がタイムパラドクスになるから未来の指示に従わないといけないと言い出したり、それに対してフラれたマスターが即ノリノリで過去の自分に嘘を付いたりし出すと、説明省略の領域を超えて、「キャラがむちゃくちゃ」という根本的な問題に直面する。

 この映画はあくまでギミックを描くもので、キャラクターは相当おざなりだ。キャラをほとんど名前で呼ばず、キャラとして描くよりは人物のシルエットで認識させる舞台型の作りをしていることもあって、主人公とヒロインのラブストーリーとしては不出来にも程がある。ただでさえ一時間十分っていう大分短い映画で、ヒロインが主だって出て来るのも中盤以降なので大分難しいオチにしたと思う。
だから「このことを忘れないためにオレは未来を変える!」という超あるあるかつピンと来ないオチじゃなくて、作中誰もが思ったであろう「未来の指令に従わなかったらどうなるのだろう」という一番身近なパラドクスにこそ反逆して欲しかった。
火箱

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