火箱

バズ・ライトイヤーの火箱のレビュー・感想・評価

バズ・ライトイヤー(2022年製作の映画)
2.7
ノイズがとても多く、実はノイズがなくなると普通のつまらない微妙なSF映画がそこにあったことに気付く。

まずバズ・ライトイヤーといえばポリコレ問題だ。ただ、これは作品を破壊するほど強力なポリコレではなかった。もちろん疑問符が出て来る箇所は増えてるが。
バズにとっての想い人となるヒロインが女性と結ばれ、しかも子供まで出来る――この描写は別にいいのだが、この影響としては相手が男ではないため、「NTR度が減少すること」が挙げられる。

男にNTRされるのと女にNTRされるのでは、受け取り方のダメージは男の方が大きい。これはポリコレ視点を抜いても、バズは男なのでバズに共感して見ているはずの視聴者もNTRダメージは軽度で済んだはず。

この作品、真のヒロインは初期の想い人の子孫なので、このNTRダメージを軽度で済ませたのは実はプラスに働いている。ヒロインを見る度、間男の顔が思い浮かんではバズが更に報われなくなってしまう。なので作品に与える影響としてはこのポリコレは案外上手く機能しているかもしれないと個人的には思う。

ただ、そんなことよりも、この映画が微妙なのは単純につまらない映画だということだ。
コレに本当にアンディが夢中になるかどうかという視点もあるが、それを抜きにしても、この映画は本気でフツーのSFでしかない。アクションシーンの映像は巧みだが、仲間は使えなくて魅力がない。ヒロインも調子が良いだけ。都合のいいときだけ使えない連中が有能になって、難局を打破するいつもの展開が待っている。

ウラシマ効果のシーンが終わったあと、ザーグと戦い始める中盤以降はバズ自身があまり波に乗れない。役立たずの仲間をちょこちょこ活躍させるために、バズが微妙に失敗するシーンが多いからだ。
この作品のネックとなるポリコレポイントは実はここにあって、「白人的・アメリカ的なマッチョイズムの否定」にある。

別に否定すること自体はいいのだが、否定する相手がよくない。普段は適当で調子が良く、無能で魅力の無い仲間達に主人公が窘められるのはあまり気持ちのいいことではないからだ。

あとはもうSFギミック的には普通の魅力薄なアクション映画が残るだけ。映像はすごいが、それは前半の宇宙船のシーンなどで、後半のアクションシーンがすごいわけではない。
良かったのは意外と山内の演技が上手かったこと。あんな変な仲間より山内との絆をもっと前面に出せば良かったのに。
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