ジャックシューチャー

辰巳のジャックシューチャーのレビュー・感想・評価

辰巳(2023年製作の映画)
3.8
東京国際映画祭のコンペティション部門「アジアの未来」枠で出品された作品。公開は来年らしいんだけど映画祭にていち早く鑑賞。

荒み切った裏社会業でサバイブしている主人公の辰巳(タツミ)。
組織の人間に元恋人の京子が殺され、その目撃者となり命を狙われている京子の妹である碧(アオイ)をひょんなことから助けることになるんだけども、この碧がまあ血気盛んで殺した人間への復讐に燃えまくり。しかもその相手ってのがよりによって組織のボスでも手に負えない狂気に満ちた殺し屋兄弟。
辰巳はさっさと逃げたいのにそんな碧の復讐劇に巻き込まれてしまいさあどうする、というお話。

バリバリの新鋭監督である小路紘史(ショウジヒロシ)による注目作、とのことなんだけども恥ずかしながら小路監督作は未見で全く何の事前情報もない状態だったので最初はアートで詩的な雰囲気が漂う、どっちかというと玄人好みのインディ映画なのかなと思っていたけどとんでもない。御見それしました!

この手のジャンルでは本場の韓国映画にも劣らない、いやさ十分に対抗できるんじゃないかと思わせるほどのド直級のヴァイオレンススリラーだった。
ヤクザでもない、所謂半グレ的なものでもない、独特の組織体系があってそれがまた独特の世界観になっている。描かれていることもエグみたっぷり恐ろしく暴力的なことなのに、陰惨になりすぎず且つリアリティラインをギリギリに保ちながらエンタメに振り切っている映画としての絶妙なバランスがもうお見事!としか言いようがないものだった。

おそらく低予算で制作されたんだろうけど、それでもこんなにおもしろい映画が、こんなにすごい映画が日本でもできるのかと思わせる素晴らしい作品だったと思う。
遠藤雄弥と森田想をはじめ言葉がなくとも目と表情で語り合う役者陣の鬼気迫る演技も圧巻だったしとにかくすごい映画だった。

小路紘史監督、ぜひ今後も注目していきたい。