半兵衛

レミー・コーション/毒の影の半兵衛のレビュー・感想・評価

3.0
敵との駆け引きや情報戦ではなく、惚れた女性との虚々実々のやりとりが一番スリリングなのがお国柄を良く出している007の先輩とも言うべきフランス版スパイ映画。敵に捕まった主人公スパイレミーがターゲットとする敵の情婦と落ちた手錠の鍵をめぐる愛とサスペンスが交錯した場面の緊張感とスリルが半端なさに興奮させられた。

レミー・コーションは女にも悪にも強い伊達男、そんな彼が様々な危機を掻い潜って敵を追い詰めていく展開はテンプレだけどテンポが良いのでサクサク楽しめる。でも海のなかに落ちてなんとか地上に戻ってもすぐに捜査に向かうってどんだけタフなんだよと思わず突っ込む。

ヒロイン役の女優さんがいかにもフランスらしい妖艶さが全身から醸し出された美人女性、そしてやはり気高い。あと彼女が表情を出さないので何を考えているのか全く掴めず、サスペンスをいっそう盛り上げる。

後半の狭い屋敷での銃撃戦がかっこいい、あとラストは007みたいだけどカメラが主人公とヒロインから遠くの街へとパンしていく仕草がおしゃれ。

ゴダールがこの映画に影響を受けて『アルファヴィル』と『新ドイツ零年』でエディ・コンスタンティーヌにレミー・コーションを演じさせているというのがいかにも映画マニアな彼らしい。
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