イトウモ

イサドラの子どもたちのイトウモのレビュー・感想・評価

イサドラの子どもたち(2019年製作の映画)
4.5
大傑作

振付師の女の子はイサドラ・ダンカンが子どもを亡くした伝記を読み上げ、彼女の振り付けを示す楽譜のようなものが書かれた本を読み、丹念に振り付けをたどる。

ダンスの先生に、ティーンエイジャーらしき女の子がダンカンの振り付けの意味を教わりながらたどたどしくレッスンを受ける。

本番の公演を見た足の不自由な老夫人は家に帰って、ダンカンの振り付けを思い出し、真似てみる。

三部構成。
まるで耳に残った曲を風呂場で口ずさむように、彼女たちはダンスを踊る。だからこれはダンスの話だが、同時に記憶の話でもある。ときどき私たちは言葉を、メロディを、耳に残ったなにかのパターンを思い出して、少し懐かしんで断片的に複製する。ただそれをダンスでやってみせる。思い出すって身体でやることなんだというのがものすごく感動的だ。

子どもをなくしたダンサーが残したパターンを見知らぬ誰かが今も思い出す。その人たちのことをこれは「子どもたち」と呼ぶのだ