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すばらしき世界のOBのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.5
人間というものは長所と短所の塊。完璧な人間など世の中に一人もいない。その塊たちが交わり家族となり、集まって組織をつくり社会を、そして世界を形作っている。

当然、その形はいびつにならざるを得ない。完璧な善人もいなければ、完全な悪人も存在しない。

我々が生きていく為には、多かれ少なかれ、または善かれ悪かれ、そのいびつな社会と結びつき、折り合いをつけなければならない。

ある時は主張し、またある時は妥協をしながら自分をコントロールすることが求められる。結果として息苦しくなりストレスを溜めて病んでしまうことも少なくない。その場から逃げ出したくなることも多々あるだろう。

しかし、我々は生きねばならない。与えられた生を全うすることが全ての生き物に与えられた使命なのだから。

使命を果たす為に最も重要なことは、それぞれの人生を、果てはこの世界を肯定することだと思う。正解の無いまさにいびつな自分の人生を正しいと信じて愚直に生きると同時に、自分と同じようにいびつな他者も受け入れる。

その行いが好連鎖を生みだし、同じ景色でも見え方が変わり、私達はこの世の中というものを『すばらしき世界』であると感じることが出来るのではないか。

主人公の三上の生き様を通じて、私はこの作品からこのようなメッセージを受け取った。

役所さんの緩急を使い分けた圧巻の演技と、ダイナミックながらも品のあるカメラワークが本作の説得力を高めている。

昨今のLGBT差別や障害者偏見など、これからの社会が抱える「多様性に対する受容」という課題への回答も含めた、西川監督作品の中でも最も普遍的であり現代的であると感じた一作。
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