さよなら僕のマクガフィンたち

すばらしき世界のさよなら僕のマクガフィンたちのネタバレレビュー・内容・結末

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

コスモスの花言葉は、「協調」や「謙虚」である。コスモスを握りしめながらの三上の死は、生物学的な死か。人間としての死か。
「広い空」に浮かび上がるタイトルバックの「すばらしき世界」。それは痛烈な皮肉ともとれるエンディング。

西川監督作品を全て観ているわけではないが(『ゆれる』、『夢売るふたり』、『永い言い訳』の3本です。すみません!)、人物や物事を多面的に描く様にいつも鳥肌がたってしまう。
冷静に振り返ってみれば、出所した人間の社会適用の難しさ、現代における反社組織の生きにくさという点ではよくある話かもしれない。
しかし、西川監督の演出、そして役所広司さんと仲野太賀さんの熱演、六角精児さんの優しい演技などキャスト陣の名演は、この作品に深みを与える。
忘れられないのだ。役所さんの「似てますねー」も、仲野さんの祝賀会での笑みも六角さんの「良かったねー。」も。

社会に適用するために、様々なことを飲み込み続けて、心身共に壊れた三上はどうなったか。
すばらしき世界とは何なのか、私たちのいる世界はすばらしき世界なのか。

この世界に適用しきった自分と世界に少しだけ疑問を投げかけた、帰路の電車の中。