らっく

すばらしき世界のらっくのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.0
主人公は恐らく人生の半分は刑務所で過ごしてきた瞬間湯沸かし器、感情を抑えられない男。
母親に捨てられ施設で育てられ、道を外していった。
同じ生い立ちでも、真っ直ぐ生きた人もいる、一生懸命育ててくれたスタッフもいる。反社会の人生を生い立ちのせいにするのはありきたりで、失礼な話だ。
私のそういう思いは観るにつれ、あまりに的外れなものであるとわかり、良い意味でおおいに裏切られた。

主人公は今回の出所を機に真っ当に生きようとするが、次々に迫ってくる問題に真っ当に生きることは肩身狭く生きることと思うようになる。
母親を探すべく依頼したテレビ局には利用され、刑務所で習得した技術は就職に役立たず、街のチンピラの悪さを見れば感情を抑えられない。
反社会にもどれば肩身の狭い思いはせずに暖かく迎えてくれるのだ。
揺れる。
自分を捨てた母親が自分を探しているはずだという少年のような母親への思慕と、真っ当な世界での暖かい出会いが彼を救う…
観客の誰もが安堵したと思う…。

最後握りしめたコスモスを見て主人公は何を思ったのだろう、
ラストシーンは、映画のタイトルだった。すごい。

最後に、このコロナ禍、久しぶりに映画館が満席に近く、嬉しかった。
らっく

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