骨折り損

すばらしき世界の骨折り損のネタバレレビュー・内容・結末

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

すばらしき...
そう、すばらしき世界。

ネタバレなしの感想は諦めた。今作の感想を素直に言葉にしようと思ったら、タイトルの重要性がどうしても切り離せなかった。

「すばらしき世界」
観終わった後何日経ってもこの言葉を頭の中で反芻し続けている。

刑務所から出てきて、どうにかシノギとして生きていこうと踏ん張る三上。彼が久しぶりに見る外の世界の人たちは彼に絶望を与える人もいる。でも、三上を本当に好いて、応援してくれる人もいる。彼がただ生きづらいだけの映画ではない。

「すばらしき世界」
そう画面にふっと現れた時、鑑賞者がその瞬間に性善説を信じているか、性悪説を信じているかで映画の解釈自体変わってしまうよくできたタイトルだ。そしてその意味を深く考えさせる為の完璧な演出にも息を呑む。

タイトルは彼に不寛容だった社会に対する皮肉とも取れる。だが同時に、彼を心から受け入れてくれた人達も確かにいた本来の意味でも腑に落ちる。

この世のどこにも絶対的な正義なんてない。今この世界にあるのは、自分自身の決めつけだけだ。

偏見で塗り固められたその色眼鏡は、究極もう取り外すことはできない。そう思うと悲しいし、恐ろしいとさえ思う。

今自分が見ている世界は、自分にしか見えていないんだと。

どれだけ欲しくても人の色眼鏡を借りる事はできないから、みんなバラバラに世界を見つめるしかない。

みんな違うから、結局みんな一緒。

壮大な矛盾であり、とても当たり前のことに改めてたどり着いた作品だった。
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