アニマル泉

すばらしき世界のアニマル泉のレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.2
予測がつかない動物的でしなやかでパワフルな役所広司が絶品だ。対して西川美和の演出はひたすら説明的なのが残念だ。西川は省略が下手で決定的なショットがない。役所広司が倒れるのを見せずにカーテンが窓から大きく膨らむショットで予感させた、このショットだけ唯一官能的だった。
本作は佐木隆三のノンフィクションを西川が映画化した。役所広司が圧倒的に面白いのでひたすら役所で押すべきだった。役所を追うディレクター津乃田(仲野大賀)のラインがどっちつかずになってしまっている。出所した男が社会で更生できない物語である。高倉健ならば最後に爆発して切り込むに違いない。しかし役所は障がい者を差別して笑う介護施設の同僚達に我慢して同調して笑う。そしてその障がい者からコスモスの花をもらって泣く。本作で役所は涙もろい。出所後の橋爪功と梶芽衣子とのすき焼き、育った施設での少年達とのサッカー、障がい者からコスモスを貰う、安田成美との電話、4回の泣き場面がある。
本作は「声」の映画だ。電話の声が多い。役所と安田成美、大賀と長澤まさみ、重要な場面が電話の声で描かれる。
西川は俯瞰が好きだ。クレーン、ドローンなどシーン終わりに俯瞰が多い。ラストカットもクレーンショットだ。
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