鯛茶漬け

すばらしき世界の鯛茶漬けのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
3.7
人間って社会的動物だな~と、つくづく思う。

少し自分の話を挟むんだけど、ここ最近落ち込むことが多くて、もう誰とも関わりたくないよ…みたいに世界と自分との関係を全て切りたくなる時がある。でもすぐ時間が経てば、人と会話したくなるし、というか人とコミュニケーション取らないと生きていけないし、そのことに気づいて、自分も人間なんだなぁと再確認する、みたいな件を繰り返してる。

三上も出所後に人との繋がりがあったから、またムショに戻らずに生きれた。
最後津乃田のナレーションであったように、刑期を満了しても行く宛てがなくまたムショ戻りというケースも少ないんだそう。

では三上はなぜ人との繋がりを持てたのか?
それは、"熱"があったからだと思う。

猫を被っていたかもしれないが、三上にはもうムショは懲り懲りで、この世界で自分の力で生きていきたい、社会を構成する一員になりたいという強い熱があった。
だからたとえ何悶着かあったとしても、津乃田、身元引受人夫妻、スーパーの店長、ケースワーカーの人、みんな最後まで三上のことを思っていてくれたんじゃないかな。
それだけではなくて、ヤクザ側の奥さんも守ってくれたし。
思いが人を繋ぐように、その人のことを思うのはすごいことだ。。


三上は最期、"普通"として人生を終えたのだろうか。
少なくとも、介護士達の談笑の中で、同じスタッフの障がいを持つ人をバカにする会話で空気を読んだ瞬間は、社会においての"普通"になれていただろう。
この"普通"が社会であり、そんな社会で生き抜くために必要な我慢であり、これこそが
"すばらしき世界"なのか、
だとしたら最初に三上が言ったように、そんな嘘をついて生きていかなければならないなら死んだ方がマシかもしれない。
そこら辺すごく難しい。最後の三上の涙には心を打たれた。

ラストシーン
さっきも述べたように、三上の存在、思いは残された者たちに受け継がれていく。
この映画のキャッチコピーである
「この世界は、生きづらく、あたたかい」
というのはすごくいいと思った。

俺もまだ、生きてみようと思った。
鯛茶漬け

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