butasu

プラットフォームのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

プラットフォーム(2019年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

惜しかったなぁ…でもしょうがないんだろうなぁ…という感想。

まず、この作品は終盤まではソリッド・シチュエーション・スリラーとしてめちゃくちゃ面白い。いわゆるCUBE路線なのだが、死ぬほどたくさん作られたであろうCUBEのフォロワーがどれもクソ映画だったのに対し、この映画の圧倒的な面白さは別格。シンプルでありだからこそ奥深い状況設定と、魅力的な登場人物、決して過度ではなく物語上必要十分な量のグロテスクさに、見せ方の上手さとテンポの良さ。設定は、1ヶ月で階が入れ替わる、上の階からは食事が降りてくる、下がるほど残飯になり、下の方では何も残らなくなるため当然殺し合いが発生する…というだけ。このアイディア自体とその活かし方が素晴らしく、CUBEからこれだけ時間が経った今の時代にここまでの物が作れるのかと心を震わせながら見ていた。

ところが終盤、この映画は"考察の余地がありまくる意味深映画"の側面を急に全面に出してきて、そのまま何も解決せずに終わってしまう。いや確かにそれまでも色々なものがメタファーとして捉えられる作りにはなっていたし、聖書の引用とかもバンバン出してきてはいた。しかし、それはあくまでもストーリーの面白さを担保した上でのこと。急にラストでストーリーをぶん投げられてしまい、正直かなりショックだった。やりたいことはわかるし、元々監督が撮りたかったのがこういう映画なんだとしたらもうしょうがない。おそらくネット上に大量の考察サイトがあるだろうし、この手の意味深映画が好きな人にとってはたまらない出来ではあるのだろう。ただ、それまでがあまりにクオリティの高いスリラーだったので、あのままオチをつけていたら最高だったのに、シンプルに世界中が熱狂する名作になっていたのに、という気持ちが消えない。本当に残念。

一応、一切の比喩やメタファーを考えずにストーリーを解釈できないこともない。途中、パンナコッタに入った髪の毛にブチギレる料理長の映像を挟み込んでいるということは、結局彼らがやろうとしていた"伝言"なんか全く意味のないことだったということなのだろう。”いるはずのない少女”というのも絶望しきった主人公が見た幻だったと考えられる。その少女が階を猛スピードで上がっていくラストは、主人公の"希望"がのぼっていくようにも見える。まぁ話だけ考えたら主人公が一緒にのぼらないのは意味不明な上に消化不良でカタルシスゼロだし、やっぱり単純にストーリーとして面白くはないが。

深く考えずとも、一切下層のことなど考えない上層、上層のおこぼれを奪い合う下層、"認定証"があれば幸せに生きていけると信じる人々、開き直って冷静に状況を受け入れどの層に行っても淡々と対処していく男、世の中を説得で変えられると信じていたがちっとも上手くいかずあげく信じていた世界が虚構だったことを知り自殺する女、など、普通に社会構造の再現としては確かに良く出来ていて興味深い。

とにかく終盤までは本当に面白かった。悔しい。
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