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ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像のSpicaのレビュー・感想・評価

3.9
「あと一度でいいんだ。いい商売がしたい」

ヘルシンキでギャラリーを営む美術商のオラヴィは72歳。店を畳む前にもう一度納得のいく仕事をしたいと思っていた彼は署名のない一枚の肖像画に心惹かれる。ルーピンの幻の名画では…と職業体験に訪れた孫のオットーと共に調べ始めるが…というお話。

必要なセリフのみのとても静謐な映画。
一枚の肖像画を追うと共に、仕事一筋で頑固に生きてきたオラヴィの仕事への誇り、疎遠になっていた娘と孫との拗れた関係など様々な人生模様も浮き彫りになり、いろいろな感情にずっと胸がザワザワした。そして一枚の肖像画がオラヴィと家族の絡まった心をほどいていく。

でも人生そんなに上手くはいかない。やるせない想いに溢れたが、ラストディールにふさわしい、一番渡るべき人の元へ渡ったのでは。

良い作品でした。
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