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画家と泥棒のSpicaのレビュー・感想・評価

画家と泥棒(2020年製作の映画)
3.9
「何を思い、何を感じ、なぜ俺に関わるんだろう」

最初はドキュメンタリー風の映画なのかと思った程、劇的で秀逸なドキュメンタリー作品だった。

2015年にオスロのギャラリーで実際に起こった絵画の盗難事件の画家バルボラと犯人ベルティルのドキュメンタリー。監督は二人が会うようになって4回目くらいからカメラを回し始め、3年以上密着したそうだ。

この世に二つとない自分の大切な作品を盗んだ相手に興味を抱き、対話を重ね、モデルとして彼を絵の具に乗せて描いていくというバルボラの行動は、彼女の恋人が懸念するのも尤もで、客観的には理解が難しい。だからこそ人間は面白い。
彼女が描いた自分の絵をベルティルが目にした途端に号泣するシーンがとても印象的。バルボラが彼の孤独で閉じ切った心を開いたのだ。
そして意外にも後半になるにつれて今度はバルボラ自身の危うさが浮き彫りになっていく。

とても奇妙な、なんとも形容しがたい二人にしか存在しない関係。まさに魂の結びつきというのかな。ドキュメンタリーだからこそ描ける関係なのかもしれない。

彼女が救い、彼が救う。

最後の絵には鳥肌が立った。
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