花束みたいな恋をしたのnagaokaのレビュー・感想・評価

とにかく固有名詞の多い導入。作家や、駅名、事件、場所。そうしてリアリティを高めて、逆に匿名性というか、普遍的な共感に引き摺りこむ。出会いと別れを折り紙の端のようにピッタリ合わせて、自分たちと同じ始まりをするカップルを見せる反復、それに泣くシーンが絶妙だった。互いに好きなものが同じだったのに、彼が「生活」のために会社員になり、「結婚」を口に出したあたりから破局が始まるあたり、思い当たる方が多いのでは。固有名から普遍の物語を作り、客を共感から涙に追い落とすニクイ傑作。