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はちどりのnagaokaのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
4.7
「はちどり」(ユーロスペース)はホウ・シャオシエンの画調を思わせる、記憶されるべき傑作だ。教室、食卓、漢文教室、病院。柔らかな光がヒロインを包む。韓国ドラマのように極端な悪役の登場も、劇的に引き裂かれる男女の涙もないが、恋人や友人の離反、兄の暴力や叔父の死、母の影、そしてひたひたと押し寄せる世界の崩壊の予兆に対してさえ、自己を強く保とうとする少女のひたむきな生きる意思に、物語をひたすら見続けたい妙な欲望をかきたてられる。同様な感動に、黒沢清「旅のおわり世界のはじまり」があることを思い起こさせる。監督は映画を学んだ後、映画を撮れるわけないと大学で教えていたそうだが、映画が気まぐれにもたらす僥倖が新しい才能を世に出したことを素直に祝福したい。
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