明石です

静かなる男の明石ですのレビュー・感想・評価

静かなる男(1952年製作の映画)
4.2
絵画のように美しいアイルランドの田舎町に越してきたアメリカ人の男が、土地の女性と結婚し、静かな暮らしを始める、実は彼には、明かすことのできない秘密があって、、というお話。

ジョン·フォード監督後期の作品。女性が「持参金」を持って男性のもとに嫁ぐという、なんだかジェーン·オースティンの小説みたいに現実(というか現在)離れした「近過去」の時代のお話で、話の流れに着いていくのになかなか苦労した。なぜか字幕を選択できず、吹き替えしかないU-NEXTで鑑賞したおかげもあるかもだけど笑。たとえば「持参金も持てない私は召使いも同然だわ」等のヒロインの台詞と、その持参金云々を中心に進んでいくストーリーは、当時の文化風俗に多少なりとも明るくないと、なんたる女性蔑視!と思えてしまいそう(仮に明るくとも思ってしまいそう)。

主に作中におけるヒロインの、現代から見れば差別的な扱いから、アメリカでは長らくジョン·フォードは批判の対象になっていた、という話を聞いたことがあるけど、それはよく分かる気がする。美しく気立が強い、ハリウッド的には理想のヒロインでありそうなものの、価値観がやや古風に過ぎ、また主演ジョン·ウェインの彼女に対する扱いがほとんど非人道的で、4、50年代にあってさえ時代錯誤なのではと思う。

とりあえずこの映画はショットの鷹揚さというか、牧歌的な風景の美しさに尽きると思う。真緑の田園風景の中、赤いスカートをはためかせながら羊の群れを追いかけるモーリン·オハラを映した序盤のロングショットでもう引き込まれた。ストーリーに関しては「?」な部分が多いにあった(何より女性の扱いよ、、)けど、少なくとも画面の上では見応え十分でした。
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