すんごい癒された。
今年の白黒映画はなぜか豊作だ
他者と対話すること、お互いの存在を認め合うことを描いてる。つまりコミュニケーションの物語。この訳の分からない世界に向けたラブレターのような映画。
大人になると出来てるようで、上手く避けてるだけだったりする事が非常に増えてくる。中身を見せ合うってやっぱり本当に大事だな。それができなくなったらまずいよね。
不器用で子供と共に成長していく叔父ジョニーをホアキンフェニックスが穏やかに演じる。傷付いた大人をやらせると彼の右に出る者は居ないのではないか。
子供との接し方が分からなかった彼がごっこ遊びに付き合ったり、迷子になったりされながら振り回されつつ、彼の真意を知ろうとし始めることで叔父でありながら友達のような関係性を築く過程が、彼自身にも救いをもたらす。
なにより、ジェシー役のウッディーノーマンが素晴らしい。こんな可愛らしい子どこにいたんだ。無茶を言ってからじっと見つめて反応を待ってる表情の子供らしさが演技とは思えない自然さ。ナチュラルに面倒なガキンチョ。
平気で大人を困らせるような事をするが、同時にそれだけちゃんと外に発露できてるのは偉いな、とも思う。脆さ繊細さと強さを併せ持った男の子だ。
しかし彼とて本当に不安に思ってる家族の行末については両親にも叔父にも相談できず、そのやるせない不安を伝えたくて『親がいない少年のごっこ遊び』に大人を巻き込む、というSOSの出し方をしてるのがもう泣ける。彼のやってる事はフロイトの言うところのファミリーロマンスなのかな
【小道具の使い方】
◯ごっこ遊び
◯録音機
◯音楽が流れる歯磨き機
【今日の名言】🦑ネタバレあり🦑
ーそれじゃあ、大人になる頃
君は将来どうなってると思うかな?
ー嫌なんだ。
ー…将来について考える事が?
ーあれこれ質問されることが。
ー平凡なものを不滅にするって
すごいクールだ!
ーなんでママと兄妹らしく会話しないの?
ー…ハハ、話してるさ。
ー話してない。
ー僕が1番怖いのは孤独かも。
だって人って理解しあえるようで
絶対理解できない。
ーぺーらぺら、ぺらぺーら
ー確かに、ぺらぺらだ。
ー君は慣れてるんだろうけど
ー慣れてない。時々ゾッとする。自分でもわからないほど愛してるけど、だからこそ同じ部屋にいるのが耐えられなくなる。
私って悪い母親かしら?
ーいいや、共感しかないさ。
ー悪かった。
ー僕もごめんね。
ー大丈夫。
ー大丈夫じゃない。
ー大丈夫!
ー大丈夫じゃない。僕らは、回復ゾーンの外にでてしまったんだ。だから怒ったり、悲しんだり、泣いたりしていいんだよ。大丈夫じゃなくたって当然なんだ!!
ーそれは笑ってる?泣いてるの?
ちゃんと対応したい。
ーこの時間のことを忘れるって、
さっき言った。
ー違う。思い出せなくなるって言ったのさ。…僕が覚えてる。君に思い出させる。
ー起こると思ってたことは
絶対起こらない。
思いもしなかった事がふいに起こるんだ。
だから先へ行かなきゃ。
先へ、先へ、先へ、先へ、先へ
(カモンカモン、カモンカモンカモン)