寝木裕和

カモン カモンの寝木裕和のレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
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たどたどしくも少しずつ…でも確かに、家族の絆みたいなもので繋がっていく、叔父と甥っ子の物語。
…と言ってしまえばシンプルなストーリーなのだけれど、なぜにこんなに淡々と描いていながら、胸に響くものを作れるのだろう。

マイク・ミルズの物語の紡ぎ方が、奇跡のように的を得ているからでしょう。
それは何度も挿入される、実際にアメリカ各地で暮らす子どもたちへインタビューした時の映像も、この作品が持つ説得力に寄与していたりする。

ジョニーの甥っ子、9歳のジェシーが見つめる未来と、インタビューされる子どもたちがそこはかとなくリンクしたり、また子どもの目線からでありながら、驚くほど的確に真実を捉えている言葉から、逆に大人たちの「成熟できなさ」も垣間見えたり(この物語に出てくる登場人物も含めて)。

そのインタビューの中で、とある子どもが放った言葉で、とても印象に残るものがあった。

「20世紀にはそうだった。
他者を尊重するのではなく、自分の考え方にねじ伏せさせてきた。」

ハッとした。
そうか、彼らにとっては、それは20世紀の、過ぎ去った時代の悪い因習なのだなと。
そして、未来ある彼らは、その悪い因習を、自分たちの手で変えようとしている。

ジェシーと、この映画に登場するすべての子どもたちの目線に、大きな希望も感じられる、素敵な作品だった。

そして、「未熟な」私たち大人が、なにを残していけるのか、そんなことも考えてしまった。
寝木裕和

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