トッシー

カモン カモンのトッシーのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.0
叔父と甥

大人と子供

男性と少年

人と人

絶妙に不慣れで
微妙な2人の関係性。

モノクロ世界に映しだされる
不恰好だが暖かい
コミュニケーションの物語

それでも家族になってゆく
優しく不器用な

2人のお話し。



ううんとね…

他者との関係性を築くうえで
やっぱりコミュニケーションって
大切なんだよなあ………

…と再認識させてくれる
映画でした。



特に、思ったのは
自分の気持ちとか
パーソナリティーを
相手にきちんと伝える事の
何と、意外に難しい事か…

相手の気持ちを聞く事が
何より大事と思いがちだけど

きっと同じくらい
自分の事を伝えるのも
大事なんやでえ…………


けど、それ。
伝えるのも結構、
難しいですよね。

…もしかしたら
実はそっちのが難しいかも?
…とか思うもん。

プライドや立場が邪魔して
伝えられない。

大切な人の前では
格好もつけたい。

周りの空気も
読まなきゃならない。

知ってほしい自分を
知ってもらえない。

…そんな事、
あるじゃないですか。

この映画は、
そのしんどさと大事さを
分かり易い縮図で
描いてくれたと思うんですよ。


ホアキン・フェニックス演じる
ジョニーはラジオ ジャーナリストで
子供たちにインタビュー
しまくってるんで
「聞く事のプロ」なんですけど

それでも
9歳の甥っ子との関係性に
四苦八苦するんですよ。

「こいつの気持ちがわからない!」
…ってなるんよね。

「聞く」事に比重を置きすぎても
実はコミュニケーションって
成立しないのかも分からんね。

大人だってね、
時には情けなくても
さらけだして

「好きなものは好きなんじゃ!」
…とわがまま言って良いし

大丈夫じゃない時は
「大丈夫じゃない!!!」
…と取り乱したって良いんですよ。
突然気絶したって構わないよ。

(僕だって映画館で映画観ながら
気絶したことありますよ。)


そう言う気持ちとか
何やかんやをね
きちんと伝えていくのが
大切なんだと思います。

そりゃ、関係性にもよると思うし
ライトな人間関係で
あんまりさらけだすのは
得策とは思えませんけどね。

しかし、
ジョニーとジェシーみたいに

「大人は分かってくれない」と
「子供は何考えてるか分からない」
…を乗り越えて

それなりに
家族になろうと思ったら

その辺りは
避けては通れないんすよ。多分。



ジョニーと
その妹、ヴィヴのある会話シーン

「初めて話したわね」
「どの部分が?」
「全部よ」
…ってところ。

あそこがすごく
象徴的に感じました。

それにグッときた。
あそこ良かった。

この兄妹もこじれて
面倒くさくなってたからね。

もうちょい仲良しに戻るためには
あんな風にさらけだして
気持ち伝える事が
必要だったんですよね。


俳優陣も良かったです。

『ジョーカー』の時とは
全くの別人を演じて
子役に対して「受け」に
徹したホアキン・フェニックス。

絶妙なニュアンスで
無垢な純粋さと
幼さからくる暴力性を表現し
あのホアキンを攻めまくった
ウディ・ノーマン。

メインの2人は
とても素晴らしかったですね。

全編モノクロなのもね、
様々な視覚情報よりも
2人の会話に

そしてその時の
2人の仕草と表情に
集中して欲しい

…と言う
監督のこだわりだったと
思いますよね。

そしてこれは効果的でしたよね。

モノクロの画面に
凄く意味があったと思います。



後、心を病んだ父親の
描き方も好きでしたよ。

殊更シリアスで
大きなドラマになりがちな
設定なんですけど

物語上、対処すべき
1つの問題としてだけ存在し
映画を転がす一要素にしか
なってなかったのが
良かったですね。

この父親、
さらっと普通なんよね。

それでもなお、
父親が父親なのも良かったしね。

監督の、この辺りへの眼差しとか
間合いの取り方も絶妙でね。
好きでしたね。



…まあ、とにかくね、
それでも静かで単調な映画なのでね。

それなりに退屈は
退屈なんですよ。

結構、割りと早い段階で
眠くもなります。

でも、観て良かったなあ。

別に殊更に面白くもないんだけど
好きやなあ…………

…って言える映画でしたよ。
良かった。



…それから、これからはね
僕も、自分をちゃんと
伝えるために
今までよりも一層、

面白い映画には
「面白れぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
…と正直に叫んでいこうと思います。

多少取り乱しても
構いませんし

例えその映画の世間の評価が
どんなに低くても

関係ないからね!

空気なんか読まねえぞ!!!



………あっ、でも!

逆に世間とかフィルマの皆さんの
評価が激高映画が
個人的に面白くなかった時は…

………ちょっと………
空気読んでまうかもな………

…まあ、でも、それはそれで
ある意味、正直な自分を
伝える一環………
…と言うことで………

な、なんとか…

2023-5
トッシー

トッシー