水鳥

カモン カモンの水鳥のネタバレレビュー・内容・結末

カモン カモン(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

話を聞いてくれる、という点でとても拓かれた世界観だった。だから大切な友達と話をしたいと思った。話をしようとして、何も話せなくても良いと思った。何も話せないということも、その人のことを知ることだから。
途中、タトゥーについて聞かれた子供が適当に流して、それを「あなたのそこ(話さなかったこと)を尊敬する。あなたの尊い部分を知っているということだから」というようなことを大人が言っていて、いいなと思った。
ジョニー(ジェシーの伯父)は最初から、ジェシーに誠実な態度を取ろうとするけど、自分への質問に対しては冗談で煙に巻いてしまう。それが、ジェシーと過ごしていくうち、自分の感情や気持ちを伝えることに誠実になっていった。素敵だった。こうありたいと思うことが多かった。ジェシーがわざと姿を消して、焦ってジョニーが怒鳴ってしまったシーンがあった。その後、ヴィヴ(ジョニーの妹でジェシーの母)が電話で「不安でしてしまったことを伝えて。ひとりの人間として誠実に。それで関係を修復して。」というようなことを言って、「それしかないよな」と思った。その後「簡単そうに聞こえるけど、難しい。」ということをジョニーが笑って言って、「ああ、そうだった」と思った。ヴィヴは「本当にそう」と笑った。自分が誠意を尽くしたって、それを受け入れる義務は相手にないんだった。私はここを忘れてしまうのかも、と思った。気をつけたい。
大人になるにつれて、真面目な話をすることをどうしてか気恥ずかしく思ってしなくなる、らしい。気恥ずかしさも分からなくはない。でも私は、いつだって話がしたい。そうして帰り道にハグしたい。生き方とか、社会のこれからとか、選挙とか、差別とか、愛とか、死ぬこととか、もっと色んな話をしたい。
どうしてこんな難しい問題ばかり私達に残されるんだ、と思うし、今でも本当に不条理だと思う。けれど私はいつのまにか20歳を越えて、大人と言われる人になった。最悪!とは思いつつ、私は私を大切に生きながら、「嫌」を「まあまあ」に変えるくらいはしたいと思う。
「未来の子供たちのために」とは言えない。未来の子供たちの誰も知らないし…。だから、将来生まれてくるかもしれない友達の子供とか、姉弟の子供を勝手に想像する。それか、『カモンカモン』でインタビューを受けたすべての人達のことを想うことにする。でも、世界は変えなくてもいい、ということは、知っておく。
ここ最近で最高の映画だったな。社会へのあらゆる問題提起のほとんどが、インタビューを受ける子供達から発せられたことがやるせないけれど。
「C'MON C'MON」は、「先へ 先へ」という意味だったんだね。
ポスターが何パターンかあるけど、どれも良い。表情も言葉も。「大丈夫じゃなくても、大丈夫」「大人も子供もどっちもどっち」「君の話を聞かせて」
水鳥

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