水鳥

GUNDA/グンダの水鳥のネタバレレビュー・内容・結末

GUNDA/グンダ(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ナレーションも人工の音楽もないからか、物語にされる前の話を観ているようでそこがとても良かった。ナショナルジオグラフィックのように動物たちに怒りも悲しみも投影されない姿が美しかった。人工物は映っても人の姿は全く映されないところもその世界観にノイズが入らなくて良かった。ただその姿が常に本当にありのまま美しく感じた。ここはこういう場面だ、と説明されないこと、それが本当に良かったなと思う。贅沢に時間を享受するのは輝いた時間だった。親豚の目がとても綺麗だった。子豚はやっぱり可愛かった。放牧スタイルの豚を観るのは初めてだったから新鮮だった。牛のパートは直感的に音楽的だと思った。なんでかな…。鶏のパートで寝てしまった。あと、親豚の低い鳴き声と、子豚の高いけどざらざらした鳴き声は耳障りが良くて、ヒーリングミュージックみたいだと思った。養豚場みたいに成豚が何匹もいるのとはまた違うのかなと思った。

最終部で、上記の感想のメインが崩された。多分、子豚たちが連れて行かれた。もしそういう場面があったとしても親豚の方だろうと思っていたから、不意打ちをくらった。ざらざらと重なる鳴き声が、親豚の低い声だけになった。ゆっくりと動いていた親豚が、前より機敏に、小屋の中と小屋の外を行き来していた。いなくなった子豚たちを探しているのだろうか。多分、そうだ。苦しい。私はあの親豚に悲しみを映した。あんなに心地よく騒がしかった画面が静かになった。子豚たちが常に噛みつく乳房には、代わりといってはあまりに虚しく数匹の蠅が止まった。

肉を食べるのは好きだ。親豚の目は綺麗だ。
肉を食べるのは好きだ。
親豚は、子豚を探しながら、最初と同じく綺麗で真っ直ぐな目をしている。そこに強さをみるには、あまりに勝手だと思った。
私は悲しい。
どうすればいいのか分からない。
ここですんなりベジタリアンへ移行するにはお父さんの仕事を見過ぎていたし、
何も罪悪感を抱かずに変わらず肉を食べるには、あまりにストレートなショックだった。
時間が欲しい。
水鳥

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