Dumbo

ミッドナイトスワンのDumboのレビュー・感想・評価

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
4.2
明日で休館になる
びわ湖が一望できる湖畔の映画館
『大津アレックスシネマ』

休館前の最後に、今日行ってきました。
朝一の上映回を目指して、
びわ湖へ向かう駅からのなだらかな坂道を
秋の清々しい空気の中歩く。
ついこの前まで、
朝でも汗だくになりながら歩いたこの道。
今日は日傘も要らない。
季節の移ろいを感じながら、
もうこれからしばらくは、
この道を歩くこともないんだろうな…
これからいっぱい通おうと思ってたのに…
と、感傷的な気持ちになりながら…


この作品(と『テネット』)は
観に行く予定してたので、
タイムラインにアップされてても、
読むのを我慢して、
観てから読ませていただこうと
取っておいてあるので、
あまり情報を入れずに観ました。
ただ、
辛いだろうことだけはわかっていましたが。

結果…
思っていた以上に辛かった。
でも、
思っていた以上に観てよかったと思った。
ひたすら泣いた。
こんなに気持ちが入り込んだ邦画は
久しぶりだった。
凪沙さん、一果ちゃん…一果の母親…
登場人物の誰とも同じ経験はしていないのに、
とにかく映画の中に入り込んでしまい、
気持ちを重ねてしまい…
いちいち辛かった。

一果が踊る姿が本当に美しくて、
一果が踊るたびに涙が止まらなかった。
美しくて泣けた。
とにかくバレエを踊るシーンですごく泣いた。

内田監督がインタビューで、
オーディションでこの子を見て、
「たとえ演技ができなくてもいい、
草彅君の横に立っていてくれるだけでいい」
と思ってこの子を選んだのも納得できる。
ほとんど無表情なのに、
こんなに気持ちがよくわかる演技は、
『はちどり』のウニちゃんを思い出した。

草彅君の演技力は言うまでもない。
役作りは一切しないというのもすごい。
監督に頼まれたのはただ一つ、
「脱毛サロンに通って」だけだったらしい 笑

 

これは、都会の片隅の
陽の当たらない場所で生きる
一人のトランスジェンダーと、
母親から虐待されてきた孤独な少女の
物語でありながら、
すべての生きにくさを抱える人たちの
物語でもある。

トランスジェンダーや虐待や、
そういう問題をきれいに描かず、
あえてそこに重点を置いていないところもいい。
そういう問題を解決しようとか、
そういう人たちが生きやすい世の中にしようとかそんな事を監督は、
この作品で言いたかったのではないと思う。

ただ、凪沙さんは一果を救った。
どんなに苦しんだ人生でも、
役に立たない人など、誰もいない。
それだけで、救われる気がする。

凪沙さんに言ってあげたい。
「お母さんだったよ、誰よりもあなたは、
 お母さんだったよ」って。

“白鳥の湖”とは逆に、
夜の間だけ美しい白鳥だった
“ミッドナイト・スワン”の凪沙。


湖のほとりの映画館で観た、
切なく悲しい映画でした。



上映が終わっても、立ち去り難く、
とりあえずスタッフさんの迷惑にならないように
部屋を出て、
ロビーの窓際でびわ湖の景色を眺めていました。
もう最後だからか、
この映画館では珍しく、
平日の朝一の上映回でも20人以上はいました。
全員女性でしたが💦
私は今日も一人でしたが、
お友達同士で来ていた方が多くて、
なんだか賑わっていました。
みなさん立ち去り難い様子で、
観終わった後も、
しばらくとどまっておられました。
今日も晴れていて、
びわ湖の景色は最高でした。

もうここにも、
しばらく来ないだろうなと思って、
同じ施設内にある滋賀の特産品のお店
“湖の駅”で、滋賀のお菓子と
ほうじ茶オーレを買って帰りました。
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