Dumbo

PERFECT DAYSのDumboのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.8
何かを手放して得られる幸せもある。



その“何か”は家族なのか、裕福な暮らしなのか…?

はっきりと語られることはなかったけれど、
平山というひとりの男が今の生活に至った理由は
身内に会った時の様子や
毎日のように見る奇妙な夢からなんとなく想像する事ができる。


毎日同じ時間に起きて同じように身支度をして仕事に出かける。

仕事も丁寧で、
たとえ誰の目にとまる事はなくても
けして手を抜かない。
人が嫌がる仕事でも、不満も漏らさない。

ささやかな楽しみは
朝の缶コーヒー、
銭湯、フィルムカメラで撮る木漏れ日の写真、
車の中でカセットテープで聴く
70年代の洋楽。
小さな植物を育てること。
そして
座れば「お疲れさん」と言ってお酒とおつまみを出してくれる行きつけの呑み屋。

生活に必要な最低限の物以外、他には何もない部屋に
不釣り合いな数の、たくさんの本。

お風呂もない古いアパート暮らしでも、
小さな植物を愛で、
本が読める毎日をきっと平山は幸せに思っている…



“足るを知る”生き方は
人をこんなにもおり目正しく
誠実にさせるのでしょうか。

人からは無愛想に見えても、
心優しい平山の生き方は、
なかなか真似できないけど
とても素敵に見えました。

一方で…
“足るを知らない”柄本時夫が
正反対なダメ男で…
平山の実直さをより際立たせてました笑


柄本時夫って“ダメ男職人”って言ってもいいくらい
ダメ男の役が上手いですね笑
(めちゃくちゃ失礼ですがめちゃくちゃ褒めてます)

そしてこの作品は何と言っても役所広司さんの、それこそ職人技のような演技力で成り立っていると言っても過言ではないと思います。


ドイツ人の監督という事で、
映る景色は東京で、登場人物もみんな日本人なのに、
使われてる曲や映像の使い方で、
レトロでおしゃれな洋画のような作品でした。


実は海外の賞にノミネートされるような邦画は合わないことが多いので、
こちらもあまり期待値上げずに観に行きましたが、
これはとても好きな作品でした。


年明けに観に行ったにもかかわらず、
その後バタバタしていて今ごろのレビューアップとなりました💦


私もある事を手放して新たな生活をしている一人ですが、
本と音楽があれば生きて行けると言いながら、
映画も観たいしライブにも行きたいし…
と、
まだまだ平山のような“足るを知る”生活はできそうにないです笑
Dumbo

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