Dumbo

ピアノ・レッスン 4KデジタルリマスターのDumboのレビュー・感想・評価

4.0
通常版も観たことなくて、
この劇場で時間が合うという理由だけで選んだ作品でした。

まさかこんな衝撃的な作品とは💦

このピアノ曲、聴いたことある!!
何かのCM?
この作品の曲だったんですね〜





19世紀のまだ未開拓なニュージーランド。
季節的なものなのか⁇
毎日嵐のような荒天…
海は荒れ狂い、
地面はぬかるんで歩けないほど…
まるでエイダの憂鬱な気持ちそのままのようなお天気で…
片頭痛持ちの私は
観ているだけで頭痛くなりそうでした…


この時代はおそらく親が結婚相手を決めるのが普通のこと…
エイダも父親に言われるがまま、
娘と、大切なピアノと一緒にニュージーランドに行かされた。

結婚相手のことすらよく知らずに
知らない土地で結婚する(させられる)って、
どんなに不安だっただろう…

着いた日も嵐で、荒れた海を舟で渡って来たので、
やってきたというより
無理矢理流されてきたという感じだった。

口のきけないエイダにとって、
ピアノは自分の気持ちを表現する手段でもあり、身体の一部のようなもの。
理不尽にピアノを取り上げられた時、
きっと身体の一部をもぎ取られたような気持ちだったんじゃないかな…


夫スチュワートと、原住民のベインズ。
この二人の男性も狂気だけど、
エイダのした事にも共感はできなかった。

不倫はいったん置いといたとしても、
自分の気持ちを伝えるために娘を利用したり、
その娘にとんでもない恐怖体験をさせてしまったことは
間接的にでも娘を傷つけたことに違いない。
幼い頃にこんな怖い思いをしたら、
一生トラウマになってしまう…


けれど最後まで観ると、
この作品に対する気持ちはずいぶん変わりました。



これは
正しいとか正しくないとか、
誰に共感するとかしないとか、
そんな事は考えてはいけない作品なんじゃないかな⁇と…

ずっと自分の気持ちに蓋をして生きてきたエイダは、
ベインズとのことで初めて
自分の気持ちに従って行動できたんじゃないかな…
不倫と言ってしまえば不倫なんだけど、
結婚しているといっても自分の意思ではない結婚だし、
これって不倫っていうんだろうか⁇
言い過ぎかもしれないけど、
もしかしたら気持ちの上では、
これが初恋だったのかもしれないとさえ思った。

夫スチュワートは
最初から上から目線のかなりのモラハラ夫だったし、
怒り狂ったスチュワートは恐ろしすぎたけど、
その怒りは本当にエイダを愛していたからこそなのだろうか?
いつか自分のことも愛してくれるだろうと思っていたのに裏切られた悲しみが
大きな怒りとなってその怒りに支配されてしまったのか。
でも結局は二人と娘を自由にしてあげたから、
それが彼なりの罪の償いと優しさだったのかもしれない。

怖すぎて、
大好きだったサム・ニールが
大嫌いになりそうだったけど…
なんとか嫌いにならずにすみそうです笑

モラ夫も嫌だったけど、
私はベインズも気持ち悪すぎて…
エイダのピアノへの気持ちを利用して
ピアノのレッスンと言いながら、
最初からエイダの身体目当てなのが見え見えで…
なにこの人、最低…
って、最初は嫌悪感しかなかった。
どうしてエイダはそんなベインズに身体を許してしまったのか?
全く理解できなかったけど…
ほんとは深くエイダのことを愛していたのね。
不器用すぎるわこの人。

そして一番心配だった娘フロラも、
確かに心に傷は負ったと思うけど、
やっぱりお母さんが大好きだったんだと思う。
その大好きなお母さんが笑顔になるのは、
彼女にとってもきっと幸せなことだったと信じたい。

ずっと無表情だったエイダの笑顔に、
それまで彼女がどれだけ抑圧されて生きてきたのかが苦しいくらい分かった。
エイダはきっと
やっと自分の心と向き合えたんだと思う。


ピアノの調べは美しくて、
無邪気に踊る娘フロラもとても可愛くて愛おしい。

それとは対照的に、
人間の業が剥き出しになる恐ろしさ…

賛否両論あることは間違いないし、
私も好きとまでは思えなかったけれど…

切なくて、恐ろしくて、官能的な…
一生忘れられないような作品でした。
Dumbo

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