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ミッドナイトスワンのぐのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

音楽:渋谷慶一郎 ということで映画自体を久々に、しかもかなり真面目に映画祭の感じで見たため、ネタバレありで事細かに書き残しておきます。

長く文句かと思う部分が多々ありますので、見るか見ないかの判断にしたい方は、草彅剛さんの演技はよく、話はイマイチですが、エンタメとしては楽しめるんじゃない?くらいに捉えてもらえれば…。

自分が気になっているのは監督の目論見がどの層にあったか、が今作の評価の分かれるところかと。主演:草彅剛、が主軸なのか、ドラマを見せたかったのか、が割と気になり、自分のような映画が好きな人間はターゲットの外にいるような印象があるため、淡々と苦悩を見せてほしかった。
ある意味では、踊り、を除けば演劇的な感じを受けました。それくらい台詞で話をみせている。

映像・撮影は申し分なく、音楽自体の評価はかなり高いのですが、脚本の流れと演出が、ひどい言い方をすると間抜け。
わかりやすい、に重視を置いたとしか思えない警察介入による2回のシーンの分断、最後の浜辺の独白。死にそうな人間の走馬灯もあんなにいるのか、と思うのはテレビドラマに慣れた主婦層向けなのかと感じてしまいましたし、冒頭のセリフのリフレインも全てを言わせないほうが綺麗でした。そのうえ、海で白鳥の効果音が強く鳴ってましたが、それに至るまでのカリカチュア化された、ちょっかいを出す中学生、少女好きのカメラマン、金持ちの親、ダンスの先生、グレた友達、風俗利用の男性像、価値観の狭い母親など、あまりに直接的な表現が多用され過ぎた結果の流れとしては、陳腐というか笑ってしまう結果に。屋上からのジャンプも新郎新婦入ってくるなら誰か止めるだろうに…など、夢想のようなイメージのため、打ち切りなのか、というくらい次のシーンにつながりがなく、単に客席のホラーをやりたかっただけ、に見えました。
他の映画なら、立派な式場からこっそり抜け出し「たまたま開いていた」屋上で1人無人の中踊って跳ぶかな、と。まだ、そちらのが自然。あの演出なら親は関係が薄いでしょうし前後を考えれば、親友側に荷重がおかれている印象です。

この映画の、というか話の主軸がジェンダーレスゆえの、というのをマイナスとして物語上の抵抗にして、そこに「娘」を与えることで母性の発露と肉体への反抗、という苦悩を見せたかったと思うのですが、結局のところ、娘の成長譚がフィクションの域を超え過ぎてしまったのが、もっとも自分が疑問に思っている点です。

このような、見通せる導線、わかりやすい障害を書き連ねながら進む物語が、個人的にはとても残念だと思いました。
そして、要所で流れるメインテーマ。いざという時の必殺の良さゆえ、もう少しもったいぶってもいいと考えるくらい、惜しい。

最後にりんの母親の猫の持ち方が、007のスペクターの首領だ!と思った瞬間から、自分の中で、この映画は笑っていいやつだ、と判断しました。
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