Inagaquilala

ファーストラヴのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

ファーストラヴ(2021年製作の映画)
3.4
島本理生の小説の映像化作品は、なかなか良作が多い。「ナラタージュ」(行定勲監督、2017年)も「Red」(三島有紀子監督、2020年)も完成度の高い作品だった。今回の原作は、前述の2作品よりは難易度の高い原作だったかもしれない。それというのも、父親の殺人容疑で逮捕された女子大生の殺害動機をめぐって物語は展開していくが、そこに主人公をはじめとする人間模様が重層的に絡んでくるからだ。堤幸彦監督はそのあたりの人間関係は無難にまとめあげている。

ただ、主人公ともいうべき北川景子扮する臨床心理士の描き方が物足りない気もした。それが、役者の演技のせいなのか、監督の演出のためなのか、よくわからないが、この主人公の内面描写にはいまひとつ物足りなさを感じた。これは原作の問題なのかもしれないが、すべてを過去のトラウマに帰してしまうのも、そんなものなのかと疑問も生じた。堤監督としては、チャレンジだったかもしれないが、どうも映像で魅せる彼の技が、あまり効いていなかったような気がした。
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