ラグナロクの足音

ミッドナイト・ファミリーのラグナロクの足音のレビュー・感想・評価

ミッドナイト・ファミリー(2019年製作の映画)
3.6
ドキュメンタリーなのにスリリングで劇的。本作を観た後では、アーカイブ映像や写真にナレーションをかぶせたり、関係者たちへのインタビューで構成したりといった定番のドキュメンタリー手法が古臭く退屈に感じられそうかくらい。テロップによる文字情報も必要最小限で、ライブ感覚あふれる映像で闇救急車を走らせるオチョア一家を追いかけ、その素顔と日常にぐいぐい迫る。カメラの画角が、運転時や平常時はキャストへ寄り、事件が起きて救命活動に入ると望遠で抑えるという、ハリウッド映画みたいなカット割りなので、ドキュメンタリーであることを忘れる瞬間が何度もあった。その強烈な「画」によって描かれるのは、命を救おうと頑張っても、患者は料金が払えず踏み倒し、報酬がなかなか得られずに苦しむオチョア家の葛藤する姿だ。そしてオチョア家を苦しめる、メキシコ政府の無能さ、行政の停滞、警察の腐敗ぶりもひどいなあ。
ラグナロクの足音

ラグナロクの足音