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鬼火のbennoのレビュー・感想・評価

鬼火(1963年製作の映画)
4.3
ルイ・マル監督作品…撮影監督はブレッソン作品も手掛けるギスラン・クロケ…。

『オスロ、8月31日』と原作は同じく、ピエール・ドリュー・ラ・ロシェル『Le Feu Follet』(ゆらめく炎)…原題も『Le Feu Follet』です…。


« La vie, elle ne va pas assez vite,
           alors je l’accélère. »

人生の歩みは緩慢すぎる…自らの手で速めねば…



アルコール依存症の為、施設に入院治療中のアラン(モーリス・ロネ)…アルコールを断つことで紛れもない"現実"が彼を襲い…"死"が纏わりつきます…。

彼の部屋の中にはM. モンローや様々な死亡記事、彼を愛さなかった妻の写真…そして鏡には7月23日の文字…それは彼の人生最期の日…。

拳銃を点検し、旧友を訪ねる為にパリへ向かいます…。

家庭を持ち可愛い子供も授かった者…
薬と夢想で刹那に生きる芸術家たち…
         (ジャンヌ・モロー…etc.)
今もなおブルジョワ生活を楽しむ者たち…


生きる為の理由を友人達から見出そうとするも…やたら空虚なものに見えてしまう…。

   虚しさ…孤独…そして絶望…。

「奴らの確信…あの落ち着き…瞳には輝きがなくなった…さよなら凡庸な日々…」


彼の魂の彷徨にぴったり寄り添うように流れるエリック・サティの『ジムノペティ』『グノシエンヌ』が実に巧妙…説明的な台詞が省かれた空虚さを雄弁に埋めてくれます…。

詩的で抽象的…時には哲学的な台詞やモノローグも世界観にピッタリ…支離滅裂な彼の心境の境地を感じさせますし、カット割りも素晴らしい…。


そして翌日、療養所に戻ったアランは…。


✎︎ 鬼火とは…葬儀の出棺の際の門火のこと…。



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