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東京の恋人のmのレビュー・感想・評価

東京の恋人(2019年製作の映画)
4.2
MOOSIC版ピンク映画といった趣(ロマンポルノではなくピンクなのがポイント)。濡れ場が少なくて、若い監督が作ったちょっとお洒落なピンク映画という感じかな。でも言葉にできないうらぶれた感じとか寂しい感じはピンクっぽいなという感覚があって良かった。乾いているようでしみったれた感じとか。いまおかしんじも顔見せして美声を聴かせてくれるし。

男達のほろ苦いけど甘ったるいモラトリアムの中で、女優陣がとても魅力的。
ヒロイン役の川上奈々美の自然な演技力と溌剌とした魅力が炸裂していて、彼女のお陰で映画が活きている。冒頭、喪服を着て(そういえばあれ何だったんだろ)屋上に出てきてソファで寝そべり煙草を吸うだけで、もう目が離せない。この人はやっぱり凄いな、もっと映画に出るべきだと思う。ロングのワンピースの上に青いスカジャン羽織る衣装も魅力を増幅させてた。
妻役の階戸瑠李のハスキーな声が良い、そして‪艶っぽくて強かな存在感。‬「娼年」でも「全裸監督」でもそうだったけど今回もやっぱりトップバッター的な役割で、この人は何故だかこういう最初だけに出てくる事が多いけど何故なんだろう。もう少し彼女の事を観たい。
睡蓮みどり(ピンクだときっとこの人と無駄な濡れ場があるんだよね、色気がダダ漏れしていた)と西山真来といった少しだけの出番の女優達も良かった。
それと主人公の妹役の方、とても良かったと思う。彼女がさらりとレズビアンなのも良い。恋人役の辻凪子の事は正直今まで一度も良いと思った事が無かったのだけど、今回の登場シーンのコケ方はダイナミックで良かった。

こんな感じで女優陣が良いのだけど、兎に角男に甘い映画なので、残念ながら女性達の人物造形は男に都合良く、主体性があまり無い(その辺が「火口のふたり」とか荒井晴彦脚本との決定的な差だと思う、いや関係無いし比べるのもどうかと思うけど)。作られた人物ではなく役者自身の魅力で成り立っている。それはそれで悪くはないのだけど。

以前から森岡龍の芝居を見る度に胡散臭いというか鼻持ちならない感じがすると思っていたのだけど、今回の役はその鼻持ちならない感じが「カルテット」以来に良い具合に役に生きていた。
義兄役の吉岡睦雄はほんと巧いなぁ。この人のファンなので出てくるだけで嬉しい。
キム兄はこういうカタギじゃない呑んだくれた役が絶対合う。



色んな人が失敗しがちな章立て構成も結構上手く使えていた。バッティングセンターの結果を後で見せるの良かったな。あの長い長い夜道の引き画も。マメ山田の寂れた食堂もなんか忘れ難い。
男に甘いと言ったけど、自分も男だしこの主人公の事やモラトリアムの苦さと甘さは色々分かるので、なかなかこの映画を突き放せない。下社監督の名前は覚えておこうと思う。東京60WATTSの歌も作品にぴったり合っていて印象深い。
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