kissenger800

モンスター: その瞳の奥にのkissenger800のレビュー・感想・評価

モンスター: その瞳の奥に(2018年製作の映画)
-
正直『ブラック・クランズマン』(2018)のときはいきなりこんな良い役もろてあんたお父ちゃんに御礼言うときや。という感想が何よりも先に立ったし『TENET テネット』(2020)もええからもう監督さんの言う通りにしときそうそれでええねん。
云々、役者ジョン・デビッド・ワシントンを真顔で見たことが実は一度もなかった私。
ところが上記2作より前に公開された本作、作品いちばんの収穫と呼んでもどこからも文句は出まいと確信できる演技を披露していて、何この推しの子の出来が良いときに叫び出したくなる感情。

分かりやすい例を挙げれば、脇役としてリアーナの旦那が出て、役柄の向こうから本人の自意識がムクムク顔をのぞかせるんですよ。俺を見ろ、どうだすごいだろう。
「そういう役」だから作品としても出演者としてもいっさい不都合ない・むしろ好演なのですが、ジョン・デビッドにあてがわれている役も似たニュアンスなのね。
そこで彼が採るアプローチは父の『グローリー』(1989)と同じく小細工なしの資質一本勝負。全身全霊でそいつになっちゃう。
結果、扮するキャラのリアリティが突然画面を覆って見る者を震撼させるという破格の……あれ、俺ホメすぎてる? いやー素晴らしかったんだよ。

原作からの改変箇所が物語としての弱体化につながったんだな、と文章映像の差分を紹介するウェブサイトを見に行って納得したぐらい、映画単体ではボチボチ評価なのに、今の私がニヤけているのには、つまり相応の理由があるのでした。
kissenger800

kissenger800