キャサリン

バビロンのキャサリンのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
3.7
凄まじい狂騒感。
タランティーノのワンスアポンアタイム〜と近いものがある。

ララランドは「夢をとるか愛をとるか」的な話かと思いきや、結局のところ男女葛藤劇だったので、
なんとなく「こんな恋愛は嫌だ」を延々歌って踊ってされてるだけに思えて、
監督がどっちを表現したいのかもわからず、俯瞰で見るのも難しいので、
何も響かんし全く入り込めんし、ミュージカルかヒューマンドラマかどっちかにせえ!と個人的大批判だったけど…
今回は大勢の人物にスポットを当てていたから、俯瞰で見やすく、監督のやりたいことが明快に表れていたのかな、と。

映画に生きた人々の美しいところも醜いところも全てを讃える人間讃歌。
時代の移り変わりと共に求められるものも変わっていく。盛者必衰。
様々な人物の栄枯盛衰が並列的なあくまでサンプリング的に描かれていて、総じて一つの時代の終焉を表してたのだろうな、と。

とにかく下品だし最悪だけど、拡大解釈された人間臭さと思うと違和感はなかったかも。
3時間か…と見る前は気が重かったし、序盤のパーティーの狂乱だけで「十分お腹いっぱいだが?」と思ったし、自分勝手で悦に浸った風な映画ではあるけど、総じて分かりやすくて良い映画では?
マニーが、この激動の波に飲まれつつも、あくまで歴史を見届ける人物として配置されていたのもマル。
見届ける側の人間も、なんらかの形で映画界に関与しているという、こちらも拡大解釈的な演出。
強いていうなら、正直トンネルのフリークスショーとネリーの母親のシーンは要らんだろ…と。

監督が、本当にただただ自分の表現したいものをグロテスクなまでに、好き勝手して作った感も好印象。
この人ほんとに映画好きなんか?なんでこんな映し方するんや、みたいな否定的レビューも見るけど、
ただ大きな転換の渦に巻き込まれて散っていく人たちがいるっていう、まさに群像劇的なメッセージなので、これはこれで正解だと思ったけどなあ。
そもそも監督が表現したかったのは、多分映画愛じゃなくて、もがく人間達だろうし。
と思うとセッションもララランドもこれも、結局のところ、背景コンテンツにはそこまで興味ない監督なんだろうなあ、と笑

ラストエンディングも、こちらまでオーバードーズを起こしそうになるサイケデリックな映像が、全て一筋の涙に集約される演出は、うるさくて静かな訴えでよかったよ。
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