もちもち

バビロンのもちもちのネタバレレビュー・内容・結末

バビロン(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

夢と希望に溢れた1920年代のハリウッド。毎夜繰り返される映画業界のド派手なパーティーで、スターになることを夢見る新人女優ネリーと映画制作の仕事を夢見る青年マニーは出会う。偶然チャンスを得て、スターへの階段を駆け上がるネリー。一方、マニーもサイレント映画の大スター、ジャックに気に入られ、同じく映画界でチャンスをものにしていく。サイレント映画からトーキー映画へと移り変わっていく時代の中で翻弄される夢追い人達の生き様が映し出される。デイミアン・チャゼル監督による映画への愛と情熱がほとばしるクレイジーな作品。オープニングから糞尿にまみれ、酒、ドラッグ、セックスの乱痴気騒ぎ。酒池肉林の常軌を逸した世界に一気にぶち込まれる。エネルギッシュな狂乱の映画界が生々しく描き出され、まさしくドラッグのような魅力を持つ映画の恐ろしさと素晴らしさが脳天を突き刺す。映画界で夢を追う者達の成功、トーキー映画への劇的な変遷の中で起こる栄光と没落。散漫に繰り広げられた栄枯盛衰の物語は、映画の一部となり、今へと続く映画の歴史を作り出している。この作品は過去の映画界を美化するものでも、その闇を暴くものでもなく、激動の時代の実情をさらけ出し、ただただ映画愛をぶちまけた様なものに感じた。チャンスを得て一気にスターダムにのしあがるも、時代の変化についていけず、堕落していくネリー。同じく成功を掴むも、ネリーへの愛情から全てを失うマニー。時代に呑まれ、そんな自分に耐えきれずに遂には自殺してしまうジャックやトーキー映画への切り替わりで成功を収めるも、映画界の差別的な扱いに嫌気がさし、身を引くトランペット奏者のシドニー。ネリーとマニーをベースにしつつ、他のキャラクター達も絡み合い、かなり雑多で散漫な印象のプロット。今これは何を見せられてるんだ?そう感じる時もあったが、そもそもこの作り自体が当時の映画界のカオスさを表しているのだろう。シーンの緩急の切り替えが印象的で、これもカオスさを上手く表現しているなと感じた。そしてそんな混沌とした世界の中に、映画に生き、夢を追う者達の狂気や儚さ、美しさや醜さが入り乱れていた。それら全てが繋がっていき、形作られる感動的なラスト。大きなものの一部になりたいと言っていたマニーは、まさしく映画になった。様々な時代の様々な人達の歴史が積み重なり、今の映画へと繋がっている。なんだか漠然と映画を好きで良かったなと思わされた。ストーリーもなんだかんだごちゃごちゃしつつ(というかさせつつ)、無駄なようで無駄じゃない、最後はしっかりまとめあげられている。また、映像と音楽も素晴らしく、狂った世界の中にも常に美しさが際立っていた。長回しやカメラの素早い視点移動、細かいカットの連続など趣向を凝らした撮り方が目立ち、光と影の使い方も抜群に上手い。パーティーシーンなんかも下品なんだけどハッとするほど美しい瞬間もあって、ショーを見てるような感覚になる。ジャズを中心とした音楽も相変わらずセンス抜群。あれだけ派手な映像が多くても、凄く印象に残るぐらい使い方が上手い。演出面に加え、マーゴット・ロビー、ブラッド・ピットを中心とした俳優の演技も凄い。特にマーゴット・ロビーは半端じゃなかった。色気と狂気と野心が混じる鳥肌が立つぐらいの演技。ジャックが映画の素晴らしさを語るシーンや業界随一のゴシップ記者エレノアとジャックが時代の変化について語るシーンが凄く好きだった。「雨に唄えば」を見たことないからたくさんあったオマージュ分からなかったのが残念。最後の今までの映画史を振り返っていくシーン、あんなに他の映画の映像を丸々使ってるの見たことない。ターミネーターとかアバターとかが別の映画内で流れてるの凄い違和感。よく許可下りたなとびっくりした。
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