ユーライ

バビロンのユーライのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
4.8
「自分の人格が映画によっていかに形成されてきたか」をbioで滔々と語りたがる輩はよく見かけるが、同根の図々しさがある。誰もあんたのことなんて興味ないし、「これは自分のために作られた映画だ!」なんて思いあがりも甚だしい。あくまでも営利目的で製作されるのが映画であって、そこら辺の雑魚のためだけに慈善事業で作られているはずがないのである。その内幕もファックと糞尿で彩られた薄汚い酒池肉林の園である。そんなことは分かっている。でもねぇ、勘違いしちゃうんですよねぇ……。てっきり映画史を客観的且つ批評的な視点で見つめなおす物語なのかと思っていると、最後は「俺」になる。公共の概念を道具にして、自己愛を補強していく。だから僕と君でランデブーなセカイ系的いつもの語りやすい手口に逸脱していくし、それはこっ恥ずかしく安っぽいニューシネマもどきでしかない。何で非情なギャングが命乞いをしたら見逃してくれるんだ。あの後どうやって生き延びたんだ。そんな整合性も史実も知ったこっちゃねぇ、俺の話をしたいんだ。俺の人生がいかに映画によって豊かになって救われたかの話をしたいんだ。映画史じゃなくて、俺。俺を見ろ!あっ、これ……世界でただ一つ、俺の映画やん!涙……。幾多の版権の許諾を得てやることがそれって、本当に気持ち悪いよ。ご立派なお題目を掲げながら、オナニーして気持ち良くなってるだけなんだ。最高のオカズを使って、流しているのは涙じゃなくてスペルマなんだ。恥知らず極まりないプレイであるから、レガシーにぶっかけやがって何してくれとんねんという気持ちも、もちろんある。でもその気持ち悪さって、そのまま私の気持ち悪さでもある。だから彼とシンクロして泣いてしまったよね。白旗。
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